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第30章 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　12月24日。

　双子を含む10名のオリンピック代表選手達は、某テレビ局のセットに座っていた。スケ連のエンブレムが付いたジャケットを羽織った選手達は、昨日の全日本フィギュアを終えて疲労が溜まっているはずだが、それでもその顔は皆晴れ晴れとしている。

　目の前の出演者用の大きなモニターには、昨日迄の各選手のハイライトと表彰式、五輪代表発表の映像が映し出された。

「見事、厳しい国内選考を勝ち抜いて代表に選ばれた皆さんに、オリンピックでの目標をフリップに書いて頂きました。では女子シングルの村下佳菜子選手。お見せ頂けますか？」

　男性アナウンサーの言葉に、村下が笑顔でフリップを上げる。

「ジャン！」

　自分で効果音を付けて見せたフリップには、『挑戦！！！！』と力強く書かれていた。

「とっても！が多いですね。これはどういう思いで書かれたのですか？」

「今回、初めてオリンピックの団体戦に参加するのでそういう意味で『挑戦！』。後は……個人戦でも結構ハードなスケジュールで日本と韓国を行ったり来たりするので、調整を上手くして本番で力を出し切るという意味での『挑戦！』でもあります」

　そう言って膝の上でフリップをポンポンと弾ませる村下。

「なるほど。こちらに大会日程のフリップを準備いたしましたが……団体戦を終えた二日後から個人戦が始まるペアも体力的にとても大変ですが、団体戦後に10日も日が開く女子シングルも移動等もあり調整が大変なんですね」

　アナウンサーの説明に皆が一様に頷いて見せる。その後、

　女子シングルの宮平知子（20）が『練習どおり！』、ヴィヴィ（15）が『Gratitude――感謝』

　男子シングルの火野龍樹（24）が『団体戦で台乗りする！』、クリス（15）が『ＥＮＪＯＹ』

　ペアのマーヴィン藤堂（28）・棚橋成美（26）がそれぞれ『Season best更新！』、『スローイングトリプルアクセルを降りる！！！』

　アイスダンスのアルフレッド渋谷（22）・マリア渋谷（18）がそれぞれ『体調管理』、『和の世界を表現』　

と、各々個性溢れる回答をした。その度にスタジオが温かい笑いに包まれる。

「では最後に日本チームのキャプテンに締めくくって貰いましょう。羽生（はぶ）結弦選手！　お願いします」