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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第110章          

 暗転したリンク。

 『Masquerade』を奏でる、拙いオルゴールの音色。

 最後に浮かび上がったのは、氷の上に座り込んだクリスの姿。

 肩を落としてうな垂れるその背には、

 哀愁と、愛する人を失った孤独が浮かび上がる。

 オルゴールの音色と共に、照明が絞られフェイドアウトして行くファントムの姿。

 しかし、その背をふわりと後ろから抱き締めたのは、

 深い水色のドレスを纏った――誰か――。



 暗闇に戻ったリンクに巻き起こる、大きな拍手。

 ヴィヴィは抱き締めていたクリスに手を貸し、立たせる。

 再び照らされたスポットライトの中、仲良く手を繋いだ双子は、にっこりと微笑みを浮かべ、

 更に大きくなる拍手と歓声に、深々と膝を折って応えたのだった。



大阪公演:

 8月3日(水) 昼・夜公演

 8月4日(木) 昼公演

愛知公演:

 8月6日(土) 昼・夜公演

 8月7日(日) 昼公演
 
 移動日等を含めた6日間。

 緊張感と、出演者や周りの皆とで一つのものを創り出す喜びを噛み締めながら、THE ICEは幕を閉じた。







 そして翌日、8月8日(月)。

 羽田空港発 7:50の飛行機に搭乗した、篠宮家御一行。

 12時間半のフライトを経て、同日の12:15にロンドン・ヒースロー空港へと到着した。

 で、速攻その足で、双子はロンドンでいつも世話になっているリンクへと急いだ。

 飛行機内で爆睡したとはいえ、ロンドンの13:30といえば日本時間の21:30。

 5時間滑り込んだ双子は、ロンドンの父の実家・オーウェン家へ向かい。

 1年ぶりとなる親族達と、再会を祝したディナーを囲んだのだった。

 翌日からの双子は、日本で過ごしているのとほぼ同じスケジュールで生活を送った。

 5時起きでリンクへ直行し、夕方近くまで氷上と陸上でのトレーニング。

 帰宅してからは、祖父母達とゆっくりし、夕食はなるべく皆揃ってのディナー。

 そして、大人達が酒盛りをしている間は、持参したヴァイオリンやピアノを弾いたりしてゆったり過ごした。

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