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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第110章
8月10日(水)――ロンドン滞在3日目。
その日のヴィヴィは、ちょっと寂しかった。
前日、母 兼 コーチのジュリアンが、
『私のスケートの恩師が、今年の頭からオックスフォードで教えてるらしくて。明日ご挨拶に行ってくるわ』
と、双子だけで翌日の練習をするように言って来たのだが。
『ふうん……、僕も付いて行って、いい……?』
何故か興味を示したクリスまで、母の恩師に会いに行くことになってしまい。
よって、ヴィヴィは半日ず~~と、リンクで独り寂しく練習したのだった。
(朝食も、ランチも、ひとりで食べたの……くすん……)
正確に言うと、オーウェン家でいつも世話になっている執事のリーヴが、朝・昼と食事を持って来てくれる為、傍で見守ってくれたのだが。
彼の運転する車で屋敷に戻ったヴィヴィは、手早くバスを使い。
祖父母のどちらかは居るだろうと、階下へと降りて行った。
1階に下りると、どこからか賑やかな声が聞こえて来て。
その声に導かれるように歩を進めれば、ライブラリーで皆が賑やかにアフタヌーンティーを楽しんでいた。
祖父母と父、匠海。
そして父の兄家族5名もいた。
「おや、ヴィヴィ。今日は帰り早いんだね?」
戸口に立ったヴィヴィに気付き、相好を崩した祖父が手招きする。
「ただいま~。実は、独りが寂しくて、早く帰ってきちゃったの」
祖父母にただいまのハグをしたヴィヴィは、従姉のメグの隣りに腰掛ける。
「ああ、ジュリアンとクリスは、オックスフォードに行っちゃったんだね?」
父の言葉にこくりと頷くと、その隣に腰かけていた叔父がにやりと悪そうに嗤う。
「ほほう。ヴィヴィは予定より早く、サボって帰ってきたのか~。ジュリアンにチクったら、面白いことになりそうだなあ?」
「ち、ちがう~~っ ちゃんと予定通りの練習メニューは熟したの。でも、陸トレって、独りで黙々とやってると、誰も止めたり休憩取らせたりして来ないから、すぐに終わっちゃったんだも~ん」
本当にそうなので、「 “あの” 鬼コーチに怒られるのは嫌だ」と、ヴィヴィは必死に説明したのだった。