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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第110章
『Nei~~n? Doch es schmeckte vielleicht nach~ Lie~~be~~.』
『――いや。ことによったら恋の味かも知れぬ』
『Sie sagen, dass di~~e Liebe bi~~tter schmecke.』
『――恋は苦いものというから』
うっとりと微笑むヴィヴィの小さな顔には “恋に恋する処女” の表情が宿っていた。
『I~~ch habe deinen Mu~~nd geküsst, Jocha~~naan!!』
『――ヨハナーンや。私はお前の口に接吻しましたよ!』
両手を大きく上に掲げて歌い切ったヴィヴィが、満足そうに元通りに席に座ると、
浅田と目の前のテレビクルー達は、腹を抱え涙を流して笑っていた。
『……あ、れ……?』
ゲラゲラ笑われる意味が分からないヴィヴィが、画面の中できょとんとしている。
そしてその隣に腰かけているクリスは、珍しく困った表情を浮かべていたのだった。
その後、テレビ画面は双子プログラムへと切り替わる。
『お待たせいたしました。THE ICEならではの夢のペア・プログラム。スケート界のプリンスとプリンセスとの夢の競演です!』
ヴィヴィ自身も初めて観る、今年の双子プログラム『オペラ座の怪人』。
(ほほぉ~~、こんな感じに見えてたんだ、ふ~~ん)
そんな呑気なヴィヴィに対し、一緒に観ている家族達は、炭坑節を踊るヴィヴィにまた笑っていた。
「ヴィヴィ、どんだけ。サービス精神旺盛なんだよ!」
「素敵なプログラムなんだけど、なんか、笑っちゃう……。けど、最後 切ない~~っ」
「てか、日本だけでこのプログラム滑るなんて、勿体無いよね? 英国のショーでもやればいいのに~」
皆から色んな感想を貰ったヴィヴィは、にへらっと笑いながら、
「ん~、ありがとう?」
と、一応礼を言って置いたのだった。
(後で、クリスとも一緒に観~~ようっと)
その後、しばらく皆と話していたヴィヴィだったが、
自分以外の皆が酒を飲み始めたので、「楽器の練習でもしてくる~」と席を立ち、防音室へと向かった。
なにせ、先週はTHE ICEの為に6日間ずっと家を空けていて、その間は全く楽器を触る事が出来なかった。