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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第30章
「はい。龍樹と被ってしまったんですが、『団体戦でメダル獲得!』です!」
力強くそう発した羽生に、チームメイトやTVスタッフから「お~っ!」とどよめきが起こる。
「今回のメンバーは今集められる最高のメンバーが揃ったと思います。団体戦ではロシアやアメリカ、カナダといった強豪国がいますが、それらに充分対抗できる日本の技術とチーム力でもって、初参加の団体戦でメダルを狙います!」
「とチームリーダが仰ってますが、どうですか。ヴィクトリア選手?」
男性アナウンサーに急に振られ、ヴィヴィは背筋を伸ばすと薄く色つきリップを塗った唇を開く。
「えっと、役に立てる様に精一杯頑張ります!」
「クリス選手はどうですか?」
さらに振られたクリスは、真顔でびしりと
「頼もしいリーダーに、ついて行くだけです」
と答え、羽生に「ほんとかよ~?」と突っ込まれていた。
その後、各々テレビ局の取材やオリンピック用のスポットCM撮りをする予定の選手達は2日後に行われる、全日本フィギュアのエキシビション――メダリスト・オン・アイスでの再会を約束して別れた。
翌日の12月25日は早朝練習と夕方からの練習の合間に、双子は家族との短いクリスマスを楽しんだ。ヴィヴィは皆に内緒でこっそりと匠海に全日本のメダルをプレゼントした。そして12月26日はメダリスト・オン・アイスにて、全日本フィギュアの金メダリストとして会場を沸かせた。
メダリスト・オン・アイスは、来年行われる世界選手権、四大陸選手権、世界ジュニア選手権の代表選手の壮行エキシビションであり、また生演奏であることも売りとしていた。
ヴィヴィもエキシビションナンバーである、ボレロ~passion on ice~をソプラニスタ(男性ソプラノ)の岡本知高氏に謳い上げてもらう中でプログラムを披露した。演技を終えたヴィヴィはクリスと一緒に綺麗に飾られたキスアンドクライへと招かれる。
「こちらには全日本選手権で優勝された、女子シングル・ヴィクトリア篠宮選手と男子シングル・クリス篠宮選手をお迎えしております」
桜井という男性タレントと女性アナウンサーが仕切り、双子にそれぞれ質問していく中、ヴィヴィは先ほどの生演奏での演技の興奮が冷めやらなかった。