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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第110章
「ちゃんと、言葉にして言ってごらん?」
振り返りながらそう促す兄に、ヴィヴィはしっかりと瞳を合わせながら頷く。
「お兄ちゃんが、欲しいの……」
ただただ、貴方が欲しい。
その気持ちは、何時だって、
何歳になったって、変わらない。
ふっと弧を描く、少し肉感的な唇。
ゆらりと慾に燻ぶる、灰色の瞳。
先程までの理知的な光は、何処へやら霧散していた。
「いいよ、あげよう」
そう言って満足そうに笑んだ兄の貌は、
今すぐむしゃぶり付きたいほど、壮絶に婀娜っぽかった。
(こんなところで、こんなこと……しちゃ、ダメ……なのに……)
そう思った事が、これまでに何度あっただろう。
特にここ――ロンドンの父の生家では。
「気持ちいい?」
シャーという水音に被せ、兄の掠れ気味の小声が、問うてくる。
応えたいのに、答えられない。
今 唇を開いてしまったら、甘い嬌声が引っ切り無しに零れ出てしまうから。
涙液で潤む視界はぼんやりとしていて、
開け放したままのバスルームから漂って来る白い靄にも、視界は遮られて。
けれど、自分の下から熱っぽい眼差しで見上げてくる1対の瞳だけは、くっきりと脳裏に像を結んでいた。
「ヴィクトリア……、気持ち、いいか?」
細腰を支えていた大きな両掌が、ゆっくりとその輪郭を上へ上へと昇って行く。
今まさに、匠海の分身を受け止めている平らな腹をひと撫でし、薄らと肋骨が浮かび上がる白い肌へ。
そして、その上でつんとそそり立っている、薄紅色の尖り。
そこを爪の先でカリッと擽られただけで、匠海の腰の上の肢体は、諤々と震え上がった。
もうこれ以上窄まらないと思っていた自分の中が、更にきゅうううと狭まっていく。
兄を包み込んで。
無数の肉ひだが蠢きながら、自分にも相手にも快感を与え、その身を中からじりじりと苛む。
「……~~っ」
両掌で必死に覆った薄紅色の唇は、真一文字に結ばれて、
その口内では、必死に「気持ちいい」という言葉を飲み下していた。