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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第30章
「本当に感動しました。嬉しさで体が震えて演技出来ないんじゃないかと思うくらい、岡本さんの声が素晴らしかったです!!」
嬉々としてそう答えるヴィヴィに、桜井が微笑む。
「それはきっと僕達観客も同じ気持ちですよ。エキシビションなのにスタンディングオベーションが出てましたからね」
「特にこの曲は日本のフィギュアファンが感動や悔しさを感じながら長年耳にしてきた曲ですから、お客さんそれぞれの心の中にその時の想いやらが溢れてくるんですよね」
女性アナウンサーの嬉しい言葉に、ヴィヴィは満面の笑顔でお辞儀をする。
「塩原アナなんか涙ぐんでましたからね。さて、お二人は若干15歳で見事オリンピックの切符を手にされました。今どんなお気持ちですか?」
桜井がクリスに視線を向ける。
「正直、驚きの気持ちが大きいですね……一年前にジュニア選手としてこの大会に出た時は、まだオリンピックは念頭になかったんです。なので出場出来ることになり、まだ驚いています」
正直に語ったクリスに「代表発表から3日経ちましたが、まだ驚いてるんですか?」と桜井が突っ込むと「まだ驚いてます」と返して会場の笑いを誘った。
「ヴィクトリア選手はどうですか?」
「えっと……今の気持ちは感謝、の気持ちが強いです。コーチ達や振付の先生方は勿論、クラスメイトやお客さん――本当に色んな人に支えてもらってフォローしてもらってここまで来れたと思います。それに、クリス――」
ヴィヴィはそこで言葉を区切ると、手にしていたマイクを持ち直す。
「いつも隣でクリスが一心不乱に練習に打ち込んでいるので、挫けそうなときでも『ヴィヴィも頑張ろう』と思うことが出来ました。なのでその感謝の気持ちを胸にオリンピックで戦って、オリンピックのエキシビションでも今日のような演技が出来ればと思います」
途中何度かつっかえながらも実直に感謝の言葉を述べたヴィヴィに、会場から暖かい拍手が送られた。隣のクリスもヴィヴィの頭を抱き寄せて髪にキスを落とす。