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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

 兄の様に二世、三世の人間もいれば、実力で上がって来た生え抜きの人間もいて。

 特に後者は個性が強く癖もあり、日本では知らない人間がいないであろうヴィヴィに対し、少し挑発的に接してくる男性が多い気がした。

 それは、好意的なものもあれば勿論、

『有名人で経営者の息女とはいえ、こんな場所に顔を出すとは、小娘が調子に乗っているのでは?』

という考えが透けて見えるものもあった。

 人懐こくて直ぐに相手と打ち解けられるヴィヴィでも、四苦八苦し。

 それでもなんとか、相手に嫌な感情は持って帰られないようには出来たと思う。

 2時間の懇親会を終え、帰りのリムジンでヴィヴィはくたくただった。

 黒革のシートに埋もれる様に背を預けながら、スマホに手早く今日の収穫を打ち込み。

 けれどその間も、隣に座る匠海の姿を盗み見するのも忘れない。

 確かに疲れる、精神的に。

 けれどいつも、そんな事は兄の素敵な姿を見るだけでチャラになる。

(今日も、ヴィヴィのお兄ちゃんは、素敵……♡)

 ネイビーの1つボタンのスーツは新鮮。

 白のワイドカラーにラズベリー色のシャツがセクシーで、彫りの深い英国寄りの兄の容貌には、嫌味無く合っている。
 
 ずるずる音を立てて兄の方に身体を倒し、その広い肩に結い上げた金の頭を乗せてみる。

 運転手はいるけれど、いつもヴィヴィはクリスとべたべたしているので、それを上の兄にしても変には思われないだろう。

 ふっとすぐ傍から聞こえる兄の苦笑。

 それに続いたのは、ヴィヴィの大好きな兄の柔らかな声音。

「甘えん坊め……。今日もありがとう、ヴィヴィ」

 ワンピの胸がとくりと高鳴る。

「ん」

 そう短く相槌を打てば、匠海は更に言葉を重ねてくれた。

「本当に、いつも感謝してるよ。良い妹だね、お前は」

 前髪越しに落とされた小さな口付け。

 その柔らかで暖かな感触に、ヴィヴィは灰色の瞳を細め、ウトウトと……。



 
 ……して、しまって。

 気付いたら、何故か黒いベッドの上に居た。

「……ん……? あ、れ……?」

(……おにいちゃん、の、ベッド……?)

 背中に感じる適度な硬さのスプリング。

 そして、自身を締め付けている下着の感触で、まだ自分が着替えていない事は分かる。


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