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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

 ゆっくりと頭を起こせば、薄い胸を包むワインレッドのワンピースが見て取れ、

 そしてその先には、

「お、おにぃちゃ……っ やぁ……っ」

 このまま目覚めずに、朝を迎えていたかった。

 膝上のAラインワンピの裾の中で、兄と思われる人影が、熱心に自分の大事な部分を舐め取っているのを見た時には――。

(ま、まだ、シャワー、浴びてないのに……っ)

 確かに、軽くディナーを採った後、シャワーを浴びてから、兄の贈ってくれたワンピに身を包んだのだが。

 今日の懇親会のバンケット会場は、残暑真っ只中で結構暑くて。

 しかもヴィヴィは、当たり前だが少なくとも1回は、化粧室に……。

「いやっ やッ!? やだやだ……っっ!!」

 細く高い声で拒絶の言葉を上げたヴィヴィを、匠海はがっちりとその両太ももを掴み上げてくる。

「大丈夫。ヴィクトリアのここは、美味しいよ……、花蜜みたいにね」

「……~~っ!? い、いやぁ~~っ」

 もし、ちょっとでも、最愛の兄に「しょっぱい」とでも思われてしまったら。

(ヴィ、ヴィヴィ……、は、白化する……)

 脳内に、水温上昇で一気に白くなってしまったサンゴ――の映像が浮かんでしまった。

 その後も「嫌だ」と何度も発したのに、匠海は全く許してくれなくて。
 
 そのまま舌で指で、兄の好きなように愛されてしまった。






 
 その数時間後。

 クタクタに疲れ果てて熟睡していた筈のヴィヴィは、小さな顔に困惑の表情を浮かべていた。

 隣で眠っている匠海が、また、うなされていて。

 ギュッと強く抱き寄せられた為に覚醒したヴィヴィは、兄の様子がおかしく感じ、その顔を覗き込んだのだが。

 眉間を寄せ、苦悩の表情を浮かべる匠海。

 形の良い唇も歪み、時折苦しそうな吐息が吐き出されている。

(また、悪夢……?)

 2ヶ月前にも同じ事があった。

 あの時の匠海は汗だくで、本当に苦しそうで、ヴィヴィは心配になって起こしてしまったが。

 今 目の前の兄は、苦しそうではあるものの、汗はかいていない。


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