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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

 ほっとしてベッドを降りようとした時、いきなり手首を掴まれた。

 そちらに視線を移すと、まだ寝ぼけ眼のままの匠海が、自分をシーツの上から見上げていた。

「……ああ、大丈夫。今日も可愛い……」

「へ?」

 兄の起き抜けの第一声の意図することが解らず、ヴィヴィはきょとんと見下ろす。

「目蓋……、腫れてるかと……」

 昨夜、懇親会から帰宅した兄は、眠っていたヴィヴィに悪戯し。

 起きてからは散々、虐めていた。

 どれだけ「お兄ちゃんの、欲しい」と懇願しても聞き入れてくれなくて。

 ボロッボロに泣き出したヴィヴィに、ようやく兄はその大きな分身を与えてくれた。

 が、今度はその事に喜んで、またボロボロ泣いた妹に、匠海は興奮したらしく。

 結果、意識を飛ばすまで抱き潰されてしまった。

「大丈夫。お兄ちゃん、冷やしてくれたもん」

 意識を失ったヴィヴィを、匠海は甲斐甲斐しく風呂に入れてくれたのだが。

 その際に、よく冷やしたタオルで、泣き腫らした目蓋を冷やして介抱してくれた。

(ま……、最初から、泣かすような事してくれないと、嬉しいんですけど……)

「ごめん」

 やけに素直に謝ってきた匠海――可愛過ぎる。

「ん~ん。……うふふ」

 思わせぶりに微笑むヴィヴィは、取られた方の反対の手を伸ばし、匠海のサラサラの黒髪を指で梳く。

「何だ?」

「ん……。お兄ちゃん、ヴィヴィのこと、大好きだね?」

 そう、自惚れたくもなる。

 きっと兄は自分にしか、嫉妬深いところも見せていない筈。

 昨夜の凶行も「ヴィクトリアが、月野リゾートのボンクラ跡取り息子に、色目を使った」という、訳の判らない事で匠海がやきもちを焼いてくれた結果だったし。

「お前……リンク、行きたくないのか?」

 にやりと悪い顔で嗤う兄。

「やっ 行くの……っ!」

 さすがにもうこれ以上は匠海の相手をしていられないと、ヴィヴィは素っ裸のままベッドから飛び降り。

 ぱぱっとナイトウェアを被ると、兄の寝室から逃げて行ったのだった。


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