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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

 リンクから帰宅後、防音室で『girls』の音源を双子と宮田で聴いていたのだが、偶然 匠海もそこに居た。

『じゃあ、双子のこの曲に持った印象を聞かせてくれるか?』

 宮田のその言葉に、揃って頷いた双子は、ぽつぽつと単語を並べていく。

 ヴィヴィ『波打ち際の泡』

 クリス 『……飽和』

 ヴィヴィ『光の集合体……?』

 クリス 『臨界……』

 ヴィヴィ『色彩の爆発……なんか、岡本 太郎みたい(笑)』

 クリス 『融合……』

 ヴィヴィ『透過性の限界の……その先の先っ!』

 元気良く答えるヴィヴィに、宮田はすらすらとメモに書き留めながら頷き、先を促す。

 クリス 『……卒業』

 ヴィヴィ『木の芽どき』

 クリス 『奔放……』

 ヴィヴィ『春先の早朝の……庭の薄氷』

 クリス 『脱皮……』

 ヴィヴィ『雨傘に跳ねる雨粒』

 クリス 『……葉緑素』

 ヴィヴィ『瑞々しい新芽……。あ~~、タラの芽の天ぷら……食べたい……』
 
 そう言って、ひもじそうに薄い腹を両腕で覆ったヴィヴィに、そこにいた皆が「ぶっ」っと吹き出したのだった。




 まあでも、ヴィヴィの持ったその印象も、あながち間違っていないかも知れない。

 何故なら、高木は兵庫県の山深い谷間で、自給自足生活を送っているらしいから。

 ヴィヴィも思い出して自分で笑い、

「うん、宮田先生のお陰で、素敵なプログラムになって良かった」

「今度、ヴィヴィも弾いてみせてくれ、即興で」

 兄のその無茶ぶりに、ヴィヴィは金色の頭をふるふる振る。

「む~り~。あ、でも、『girls』のスタンダードの楽譜は頂いたんだ~、今度弾いてみるね?」

 そう言って楽しそうに笑ったヴィヴィの頭を、匠海は大きな掌で撫でてくれた。

 そして仲睦まじい年の離れた兄妹を、五十嵐は静かに見守っているのだった。







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