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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第30章                               

「僕達ファンも、日本中にワクワクやドキドキを与えてくれるお二人にとても感謝していますよ。ぜひ、オリンピックでも良い演技をしてください、応援しています。ありがとうございました」

 そう言って締めくくった桜井に「「ありがとうございました」」と双子はお礼を言い、キスアンドクライを後にした。






 
 その日の夜、双子はバンケットに出席していた。フィギュア関係者やスポンサーの親睦を深めるためのパーティーは、関係者ONLYでマスコミも入ることの出来ない伝統行事でもある。特に今回はオリンピック代表選手選考会も兼ねていた全日本選手権だったので、盛大に行われた。

 一流ホテルでお偉いさんの挨拶やスポンサーからの記念品贈呈等の一連の進行が終わると、双子はコース料理を食べたり選手達と写真を撮ったりして楽しんでいた。

「佳菜子、ヴィヴィ。ちょっといい?」

 同じ円卓でデザートのケーキを頬張っていた二人に、羽生(はぶ)が声を掛けてくる。

「な~に?」

 村下がそう言いながら席を立つのに続き、ヴィヴィも二人に付いて行く。羽生が案内したのはパーティーが始まるまで皆が待機していたウェイティングルームだった。そこにいたのはクリスをはじめとするそれぞれ着飾ったオリンピック日本代表の面々だった。

 黒い革張りのソファーに座った面々は世界でもトップクラスのスケーター達だ。ヴィヴィは心の中で「贅沢なメンツだな~」と感想を漏らす。

「これで皆そろったな」

 村下とヴィヴィにソファーを勧めた羽生は、それぞれ腰を下ろした皆に向き直る。

「えっと、まず――オリンピック代表に選ばれて、おめでとう!」

 大きな声でそう言って笑った羽生に、皆がぱっと笑顔になる。口々にお互いの健闘を褒め合う選手達をしばらく見守っていた羽生だが、コホンと咳払いをして話を進める。

「初めてオリンピックに参加する者もいれば二度目の者もいるけれど、今年は――」

「団体戦――だね?」

 羽生の言葉を遮って棚橋成美が口を開く。

「そう。日本選手の誰もが経験したことのないオリンピック団体戦に、俺達は初めて参加する選手となる――」

 そう続けた羽生に、皆は表情を引き締めて頷く。

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