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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第30章
「初めての事だから、ホント緊張するし……ちょっとNervous……」
マリア渋谷がそう言って、隣の兄――アレックスを見つめる。妹の肩を抱いたアレックスも頷く。
「そう? 私はとっても楽しみだけどな~」
そう嬉しそうに言ってにかっと笑う棚橋の隣で、ペアのマーヴィン藤堂は「成美は何でも楽しむからな!」と突っ込む。
「俺もリーダーとして皆を良いほうへ導きたいし、皆で楽しみたいとも思っている。けれどお互い練習拠点が違うし、オリンピックまで顔を合わさない選手も多くいるだろう?」
羽生の指摘に、火野が頷く。
「そうだよな~。シブシブズとマーヴィン達はアメリカだし、結弦はカナダ。双子は東京で、俺と佳菜子は名古屋、知子は大阪だもんな~」
「LINEとかで繋がるしかないよね~」と宮平。
「そう……。だから、皆にプレゼントがあります!」
羽生は皆の顔を見渡しながらそう言うと、おもむろに紙袋を取り出した。その紙袋は日本の某有名ジュエリーショップの名が印字されている。
「えっ!?」
「まじ?」
「何なに!?」
皆が口々にそう反応するのを面白そうに見渡した羽生は、紙袋から小さな箱を取り出して皆に配り始めた。
「柄じゃないってのは、分かってるんだけれど……」
そう言いにくそうに発した羽生を尻目に、皆包装紙をさっさと取り去り中のジュエリーケースを開けた。
「うわぁ……!」
「おお、金色!」
「え? え? 皆も同じデザインなんだよね?」
ケースの中に鎮座しているモノを見つめ、皆瞳を輝かせながら感想を漏らす。ヴィヴィも自分のケースからそれを指で摘み出すと、左手の中指にはめてみた。驚いたことにそれ――繊細な意匠が施された細い金色の指輪は、ヴィヴィのサイズにぴったりだった。
「凄い、ぴったりだ……」
隣に腰を下ろしていたクリスも、同じ感想を漏らす。
「実は皆の関係者から指輪のサイズを聞き出して貰ってたんだ。皆で同じものを身に着けて戦ったら、例え距離的に離れ離れになっていたとしても、一緒に戦っている気持ちになれるんじゃないかって……」
後半は少し照れながら贈り物の説明をした羽生に、皆が一斉に笑顔になる。
「きゃ~っ! 嬉しいっ!!」
「やるなぁ、ゆず!」
「リーダー、カッコいい!!」