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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

 兄の言葉に驚いてその顔を覗き込めば、下から見上げてくる灰色の瞳は本当に真摯な色を湛えていて。

 吸い寄せられる様に匠海と見つめ合えば、また眩しそうに瞳が細められる。

「お前が傍に居てくれただけで、俺の人生は凄く豊かになった」

 次いでくれた言葉も、ヴィヴィには本当に勿体無いほど素敵なもの。

 けれど、

「……過去形……?」

 唯一そこが引っ掛かって、ヴィヴィは全身で喜びを表現出来ずにいた。

 すぐ傍で、ふっと緩む大き目の唇と、灰色の瞳。

「いいや。今も、そしてこれからもだよ」

 ちゃんとそう訂正してくれた匠海に、ヴィヴィはこれでもかという程の満面の笑顔を浮かべる。

「ふふっ 良かったぁ!」

 そして、照れ隠しで匠海の頭を両腕でぎゅむうと掻き抱く。

(あん、もう、好き過ぎてっ 困るっ!!)

 ヴィヴィは愛しくて愛しくてしょうがない兄に対し、全身で喜びと幸せを表現したというのに。

 妹の薄い胸の中に顔をうずめられた匠海はといえば、

「ヴィクトリアの可愛らしいおっぱい……気持ちいい……、柔らかい……」

と、うっとり高い鼻をすりすりと擦り付けてくる始末。

 驚いたヴィヴィは、もちろん叫んだ。

 そう、心から、

「んっ もうっ お兄ちゃんの、変態――っ!!!」




(でも、すき……♡)







 だから、

 例え、匠海がその2週間後に5度目の見合いに出掛けようが、

 ヴィヴィはもう、ガキっぽく拗ねたりはしなかった。
 
 ただ、

 例の如く、見合いの夜は激しく求めてくる兄に対し、

 それを上回るほど、匠海の全てを貪り尽くしてはやったが――。




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