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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

 10月2日(日)、NHK杯が4週間後に迫る、その日。

 双子はグランプリ・シリーズ第2戦であるNHK杯の、プレス カンファレンスに、他の選手と参加し。

 そのプレゼンターが、憧れの浅田 真緒であった為に、デレデレしながら楽しんだ。
 
 10月5日(水)。

 ヴィヴィは小さな頃から世話になっている、Yバレエカンパニーにいた。

 1年半前から、モダン・バレエを学ぶために、水曜の午後は大学の講義を入れず続けてきた。

 そして、昨年末からは、ロマンティック・バレエを学び始めていた。

 今シーズンのFP『ジゼル』の為に。

 毎週水曜日、恒例のこの時間。

 ただし今日は、いつもと勝手が違っていた。

 某局の取材が入っている。

 グラジオラスの轍――アスリートにスポットを当てて取り上げる、スポーツ番組の特別枠……らしい。

「普段通りに練習しているところを撮りたいので、こちらは気にしないで下さい」

 そう言われれば、本当にそうしてしまうのがヴィヴィだ。

 いや、昔は凄くテレビカメラが気になったが、慣れとは恐ろしい。

 特に五輪シーズンに突入した今年は、とにかくカメラを向けられる事が多い。
 
 今までも数度、メディア側から希望があり、全局相手の公開練習を、松濤国際スケートクラブで行っていた。

(そういえば、先日も言われたな……)

『最近、すごくヴィヴィの事、観るよ?』

 定期的に訪問して(遊んで貰って)いる児童養護施設 新緑寮の小学生に、そう言われた。

『へ?』

『テレビで、ね?』

 照れ臭そうにそう説明する様子が、無茶苦茶 可愛かった。

 ストレッチを終えて、薄紅色のトウシューズに足を通し、くるぶしにリボンで固定する。

 このトウシューズは、ロマンティック・バレエのおかげで生まれた、究極の一品。

 バレエの歴史変遷は、端的にいうと下記の通り。


ロマンティック・バレエ 
 ヴィヴィ『ジゼル』

    ↓

クラシック・バレエ
 ヴィヴィ『眠れる森の美女』
    
    ↓

モダン・バレエ
 クリス『牧神の午後』『春の祭典』
 
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