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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

 1幕で狂乱して命を落としたジゼルは、2幕では精霊ウィリとして蘇る。

 女王ミルタをはじめとするウィリ達は、森で見付けた男達を踊り狂わせて死に追いやる。

 ジゼルの墓参りに来た、元婚約者のアルブレヒト。

 彼もウィリ達に見つかって絶体絶命。

 女王ミルタがアルブレヒトに、ローズマリーの杖を振り上げようとしたその時、

 ジゼルが飛び出し、アルブレヒトを庇う。

 墓の十字架の傍ならば、聖なる力が彼を守り、ウィリの霊力は通じない。

「決して、ここを離れないように」

 そう忠告したジゼル自身に、女王ミルタは杖を一振りした。

 意思とは裏腹に、踊りを愛するウィリの悲しい性――ジゼルの手足は踊り始める。

 それでもジゼルは何とかして、アルブレヒトを守ろうと精一杯の工夫をする。

「そうだ、出来るだけゆっくりと動こう。そうすればやがて夜明けの4時がやって来て、ウィリの霊力は消え、愛しい人は助かるかもしれない……」

 “2幕.グラン・パ・ド・ドゥ  アダージョ”――はその様子を表した踊り。

 クリス扮するアルブレヒトを守るため、自分の墓と彼の前に立ち塞がる、ヴィヴィ扮するジゼル。

 ピアノの静かな生演奏に乗せて、クリスから離れていくヴィヴィ。

 5番の脚から左の軸足に沿って、右のトウを滑らせながら上げて行き、

 丸みを持たせた両腕と共に、右膝を曲げた状態から頭上へとゆったりと持ち上げる。

 その右脚を身体の後方へ引き、アラベスクの状態で踵を床に着けたまま一周する。

 ふわりと上へ飛び上がったヴィヴィは、左脚を前に伸ばしながら上体を前方へ倒し、

 弧を描いた両腕で持ち上げるかの如く、左脚を腰高まで持ち上げる。
 
 そして最大の見せ場――アラベスク・パンシェ。

 上体を前方へ倒し、腰高まで上げた左脚をゆっくりと、更に上へ上へと高く上げていく。

 柔軟性に富むヴィヴィの両脚が、白いチュチュを絡ませながら、床から一直線に伸びる様は、圧巻の一言に尽きる。

 そのゆったりと物憂げなヴィヴィの動きは、ぞくぞくするほど魅惑的で、

『決して、ここを離れないように』

 そうヴィヴィが忠告したにも関わらず、クリスは安全な墓の十字架から離れ、女王ミルタの思惑通りになってしまう。

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