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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章
「ヴィヴィと踊ることが出来るならば、死んでも構わない」とでもいうように、踊り始めるクリス。
精霊ウィリとなったヴィヴィを、クリスは軽々と頭上にリフトする。
妹の踊りに沿って踊るクリスは、さながらヴィヴィ自身に踊らされているようにさえ見える。
美しく舞うヴィヴィを、クリスが腰を支えて助け、
そして、白いチュチュをなびかせ、ふわりふわりと漂うヴィヴィを、何度もリフトしながら移動する。
最後――跪いたクリスの背に、後ろから腰を寄り掛からせたヴィヴィが、ポーズを取ってフィニッシュする。
双子の息ピッタリの踊りに、いつの間にやら増えていたギャラリーから拍手と歓声が巻き起こる。
が、踊り終えた当の本人はというと、
「なんか、いつも思うんですけど……。最後のこれ、ジゼルが「よっこらせ」って、アルブレヒトに乗っかってる感じ?」
先程までの幻想的な空気をぶち壊すヴィヴィの一言に、うっとり見守っていた吉野が、がく~~と肩を落とした。
「「よっこらせ」って思いながら踊ってるから、余計そう見えるのよ! ジゼルは精霊ウィリなんだから、体重なんて感じさせちゃダメなのよ?」
「は~~い……」と間延びした返事を返したヴィヴィは、立ち上がったクリスに対して嬉しそうに微笑んだ。
「付き合ってくれて、ありがとう。やっぱりクリスと踊るのが、一番踊りやすい~」
幼少の頃からずっと一緒にレッスンを受けていたので、双子は互いが一番踊りやすかった。
「可愛い……」
感激したらしいクリスが無表情のまま、双子の妹をひしとその胸に抱き寄せる。
「…………、だ~か~ら~」
「可愛い って言わないで!」と何度も忠告しているのに、一向に直す気配のないクリスに、ヴィヴィがうんざりした声を上げた途端、
「そこ! いちゃいちゃしないっ!」
そう吉野に一喝されたのだった。