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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

 番組スタッフから「撮れ高OK」と言われ、双子は帰途に就いた。

 屋敷に戻り軽くシャワーを浴びた双子は、申し合わせたかの様に、防音室でばったり会った。

 いつもより早く帰宅したらしい匠海もおり、

「今日、クリスとグラン・パ・ド・ドゥ、踊ったの!」

 嬉しそうに、上の兄の傍に寄って行くヴィヴィ。

 けれど、

「解らない……」

 ぽつりと背後から聞こえたクリスの呟きが気になり、ヴィヴィは「ん?」と振り返る。

「アルブレヒトが、ジゼルを弄んだ意味が、解らない……」

 今日、ヴィヴィと踊った事により、真面目なクリスの中でそんな疑問が生じたらしかった。

「あ~~……。確かに」

 アルブレヒトは、本当にジゼルを愛していたのか――?

 その疑問は、バレエ愛好家の中でも、永く議論されている題材である。

「僕だったら、本当に大好きな子なら、絶対に大切にして……。一生を懸けて、幸せにするのに……」

「ん……、クリスはきっと、そうすると思う」

 クリスは今まで付き合ってきた女子とは、全然長続きしなかったが。

 けれどヴィヴィが知るクリスは、やはり愛情豊かでそれを惜しみなく与える人。

 双子の兄の口にしたことに、一片の疑問も持たなかった。

「大体……、ジゼルが死んだ時の、アルブレヒトの振る舞い……絶句する……」

 防音室の隅のソファーに腰を下ろしたクリスに、ヴィヴィはうんうん頷きながら目の前に座る。

「そうだよね~。ジゼル死んじゃって、自分が吐いた嘘をばらした(村人)ヒラリオンに「お前のせいだ!」って斬りかかって……。結局、周りから白い目で見られて退散……って、恰好悪いよね~?」

 屋敷で何度もDVDを見返したし、カナダでも生で舞台を観たが、毎回ヴィヴィはそう思っていた。 

「じゃあ双子は、アルブレヒトはジゼルを愛してはいなかった、と思ってる?」

 グランドピアノの椅子に腰掛けていた匠海が、双子の傍へ歩み寄りながら尋ねてくる。

「「うん」」

 瓜二つの双子が、息ぴったりに首肯する様は、傍で紅茶を淹れている朝比奈から見ても愛らしい。

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