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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第30章                               

「みんな、凄いよ! 見てみて、中にそれぞれのイニシャルとか彫ってある!」

 村下が指輪を外してその内側を指さす。ヴィヴィも指輪を外して裏を見てみると『GO VIVI 2018 PCG』という彫刻が施されていた。隣の村下のものにも『GO KANA 2018 PCG』と刻印されている。

「うわぁ……凄く、嬉しい……」

 感動してそう呟いたヴィヴィに、羽生は嬉しそうにはにかんだ。 

「細いから衣装の邪魔にならないし、いいね」

 男性陣にも好評を得て、皆「今からオリンピック終わるまでずっと付ける!」と大いに盛り上がった。

「PCG=平昌(ピョンチャングン)の略な。実は表面の細い彫刻、オリーブの枝と葉なんだ。古代オリンピックでは、メダリストにオリーブの冠を授けていたらしいから」

 羽生の説明に、皆口々に感嘆する。

「わぁ! ロマンチック!」

「へ~。凄く神聖なものに思えてきた」

「っていうか、金色って……もしかして『金メダル取れよ?』とかいう意味合いもあったりする?」

 皆がワイワイ騒いでいると、コンコンとウェイティングルームの扉がノックされ、スケ連の幹部が顔を覗かせる。

「ゆず、もう終わった? 君達は今日のパーティーの主役なんだから、そろそろ戻ってくれない?」

 幹部の的確な注意に皆が「了解~」と言ってそれぞれ席を立ち始める。ヴィヴィはその時になってようやく気付いたことを口にした。

「あ……これ全部、結弦さんが買ってくれたの?」

「実は皆のコーチ達や関係者からカンパが沢山あったんだ。だから皆、ちゃんとお礼言っておいてね?」

 羽生の答えに、皆が感謝の言葉を口にしてバンケット会場へと戻ったのだった。








 年末は練習の合間をぬって、JOCのシンボルアスリートとしての役目を果たしたり、新たにスポンサーに名乗りを上げてくれた菓子メーカー・grucoと、生活用品メーカー・P&JのCM撮りをしたりとあっという間に過ぎ去ってしまった。また双子はNHKの紅白歌合戦の審査員としてNHK杯の勝者の肩書で招かれ、初めての事に緊張しながらもなんとか楽しく勤めを果たした。
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