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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

「だって、アルブレヒトは大貴族だよ……? 貴族の婚約者までいて、ジゼルと結ばれるなんてこと、有り得ない……。そんな人間が、村人に変装して、純真な少女の心を弄んだりしては、駄目だよ……」

 クリスのその意見に、ヴィヴィは両の拳を握り締めながら、激しく同意する。

「だよねだよねっ? それでも、どぉ~~してもやっぱり、ジゼルと一緒になりたいなら、貴族らしく妾として囲えばよかったのにね?」

「「「……――っ!?」」」

 末妹のあまりに大胆な発言。

 兄2人のみならず、紅茶を振舞っていた朝比奈まで、驚きで目を丸くする。
 
 こんなにガキっぽいヴィヴィが、まさか「妾にすればいいのに」等と言い出すとは――。

「ん……? だってね、最初から貴族とその妾としての立場を、それぞれ弁えてればさ? ジゼルがショックで死ぬなんて悲劇、起こらなかったんじゃない?」

 朝比奈に「ありがと」と礼を言い、茶器を取り上げたヴィヴィは、能天気に金色の頭を左右に揺らす。

「確かに……。そしたら、ジゼルは死ぬ事は無かったね……。まあ、そんな題材は、バレエに向かないだろうけれど……」

 クリスの同意を得られ、満足そうなヴィヴィ。

 しかし、双子の後ろからソファーの背に腰を持たれ掛けさせた匠海は、違っていた。

「そうすると、ジゼルは “アルブレヒトが自分とは身分の違い過ぎる貴族” と判っている為に、遠慮してしまうだろうね。そうなると、2人の間には最初から壁が出来てしまう……。アルブレヒトはそれが嫌だったのじゃないかな?」

 匠海のその意見を聞き、ヴィヴィの幼さの残る顔が引き攣る。

「そ……それが一番、ひどい気がする……っ」

(だ、だって、色眼鏡で自分を見て欲しくないから騙すって。騙される方の気持ち……全くもって考えて無くない?)

「なんか、被食者 と 捕食者 って感じ、する……」

 そう続けたクリスに、ヴィヴィは苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべる。

「赤ずきんちゃん と 狼 的な?」

「草食動物 と 肉食動物 的な……」

 双子の意見は一致したようで、「ドSだ!」「鬼畜だ……」と、不穏な単語がぽんぽん飛び出していく。

 その様子はまるで言葉遊びをしている様で、微笑ましい。

 ――話している内容は、全くもって微笑ましくないが。

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