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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章
「うん……。じゃあ、僕は、(試合の為に)アメリカに居るペアと、アイスダンスの皆に、連絡取る……」
「ん。ヴィヴィは、知子ちゃんと……、あ! あと、佳菜子ちゃんと龍樹君にも、協力仰いでみるね?」
そう言うや否や、ヴィヴィは宮平と、4年前の平昌五輪を一緒に戦ったチームメイト、(引退した)村下 佳菜子と日野 龍樹に、電話を掛けた。
皆の想いは、ただひとつ――。
平昌五輪で先頭に立って導いてくれた、責任感が強くて真面目な羽生(はぶ)リーダーに、少しでも元気を取り戻して貰い、
ミュンヘン五輪で一緒に『団体戦での銀メダル』という、日本フィギュア界の悲願を達成しよう!
その強い想いを根底に持った皆は、すぐに双子の提案に賛同してくれ。
スケート・アメリカの翌日、10月24日(月)の午前中には、クリスの元へ各々が撮った動画が世界各国から送られて来た。
それをクリスが編集し、ヴィヴィがチェックして笑いどころを付け加え。
完成した5分にも渡る動画は、その日の内に羽生の元へとメールされたのだった。
その3日後には、双子は宮城県利府町 積水ハイム スーパーアリーナにいた。
宮平 知子と、ペアの棚橋 成美 & マービン 藤堂 も一緒だ。
グランプリ・シリーズ第2戦――NHK杯の為に。
10月27日(木)の早朝に移動し、そのまま公式練習に参加した双子は、シリーズ初戦という事もあり、メディアに引っ張りだこだった。
「今シーズンの抱負をお願いします」
「第1戦のスケート・アメリカで、米国のヴィヴィアン・リー選手(19)がダントツで優勝しましたが、ご覧になりましたか?」
「あえて、ライバルを挙げるとしたら誰ですか?」
いつも通り落ち着いて質疑応答を熟すヴィヴィだったが、そこで初めて耳にした事もあった。
「篠宮選手! 「来年のミュンヘン五輪を集大成として、引退するのでは?」という噂が立っていますが、ご本人はどういう気持ちで今シーズン、望んでいますか?」
「え……?」
まさか、巷で自分の引退が囁かれていたとは。