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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

「先に滑った宮平 知子は、現在2位に着けています。15歳で鮮烈な国際デビュー――それが4年前の平昌(ぴょんちゃん)五輪でした。それ以降、全く負けなしの強い篠宮。そして、オリンピックシーズンの、今年のNHK杯です」

 鳥海アナウンサーの声に、解説の荒河 静香が続く。

「公式練習では安定した力を見せていましたし、6分間練習ではアクセル、しっかり着氷させていました」

 会場の大型ヴィジョンには、純白の衣装の胸に掌を当て、流しているヴィヴィが映っていた。

「五輪シーズンに選んだのは、バレエ音楽『ジゼル』。自他共に認める得意なバレエ分野から、勝負を挑んで行きます」

 慎重な声で鳥海がそう綴る中、リンク中央にポジションを決めたヴィヴィが跪く。

「はい。3回転アクセルは勿論ですが、前半と後半、違った『ジゼル』を演じ分ける――そこも注目して観て欲しいですね」

 その荒河の声が途切れた途端、リンクにはフルートとクラリネットの緩やかな音色。

 リンクに両膝を着いたヴィヴィは左手に花を持ち、右手で1枚 花弁を引き千切る仕草をする。

 うっとりと恋する乙女の表情が、2枚目を摘まむ時には泣き笑いのそれへと移ろい、大きく首を振りながら立ち上がる。

 ゆったりと流れるオーケストラの音色は、美しいのに何かが違う。

 助走に乗るその表情も、不安に強張ったそれ。

「まずは、冒頭の3回転アクセル――」

「はい。回転も足りていますね……、大丈夫だと思います」

 荒河の見立てる最中、弦楽器が奏でる焦燥感を煽る小刻みで低い響き。

 次の助走に入りながらも、何かに縋る様に両腕を伸ばしたヴィヴィは、

 一瞬瞳を見開き、やがて絶望と共に腕を降ろす。

 スピードに乗って前向きに踏み切り、アクセルからのコンビネーションジャンプを降りる。

「3回転アクセル+3回転トウループ。1本目は高さがありましたね」

 オーケストラが奏でる、悲劇的で重いフレーズ。

 両手で頭を抱えたヴィヴィは、マーガレットの簡素な花冠を、震える指先で辿りながら俯き、

 バックへと滑りながら、上から波を描くように、片腕をゆらゆら泳がせながら降ろす。

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