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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第30章                               

 正月三が日はようやくゆっくりと篠宮邸で過ごした双子だったが、1月3日は篠宮一家で招かれている在日英国大使館へとお邪魔した。今年で日英交流160周年ということで、盛大なパーティーが開かれたのだ。

 ヴィヴィは黒いドレスに身を包み、大きなリボンのついた黒いカチューシャで金色の髪を飾っていた。クリスと匠海はそれぞれ素敵なスーツの出で立ちだった。

 双子は幼少の頃から「英国大使を父に持つ親友・カレンのお家=英国大使館」として何度も遊びに来ているので、勝手知ったる場所でそれぞれ寛いでいた。

 カレンと一緒に立食パーティーの食事を摘まんでいると、離れたところで知人と雑談していたはずの匠海に呼ばれる。カレンに「また後でね!」と言って匠海に向き直ると、匠海は何やら隠し事をしているような含みを持たせた笑顔でヴィヴィを見下ろしてきた。

「ヴィヴィが喜びそうな出し物が始まるよ。行ってみない?」

 匠海がそう言って視線を送った先には既に人だかりが出来ている。

「なあに?」

 ヴィヴィは可愛らしいカチューシャを乗せた頭をこてと傾けるが、匠海は「見てのお楽しみ」と言って歩き出した。人だかりが出来ていたのは、広間の奥に作られたバンド等が演奏する特設ステージだった。先ほどまでは弦楽四重奏が英国の音楽を奏でて場に華を添えていた。

 ヴィヴィは匠海とはぐれない様、高いヒールに苦戦しながらちょこちょこと小走りにその後を付いて行く。すると、

「ほら、はぐれないでね、ベーベちゃん?」

 匠海はそう言って手首までの黒いレースの手袋に包まれたヴィヴィの手を取り、自分の腕に絡めさせた。

(え…………?)

 あまりにも自然で手慣れたエスコートに、ヴィヴィは躊躇することはなかった。しかし次第に匠海と腕を組んでいるというその状況に、ヴィヴィの鼓動がトクトクと速度を上げる。スーツの生地越しに伝わる匠海の固い二の腕。体を寄せ合うことにより、より濃くなる匠海からする男性らしい香り。

 そんなヴィヴィにはお構いなしで、匠海は人ごみの中に入っていく。より近くなる匠海との距離と、触れ合うことで感じる暖かな兄の体温に、どんどんヴィヴィの白い頬が薔薇色に染まっていく。

(はっ、恥ずかしい……でも、嬉しい……でも……恥ずかしい……)
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