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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

 ヴィヴィがリンクから引き上げていく中、会場の大型ヴィジョンにはスロー映像が流れ始める。

「さあ、興奮冷めやらぬところですが、荒河さん。技術的にはどう見ましたか?」

 鳥海の質問に、荒河が的確にコメントを重ねていく。

「まず、1本目の3回転アクセル……。う~ん、ちょっと、いつもより着氷後の流れがない感じを受けます」

「コンビネーションはどうですか?」

「3回転アクセルからのコンビネーションは、1本目が高くて、余裕を持って2本目を飛べています」

 その言葉通り、液晶ヴィジョンに映る着氷後のエッジの流れも、淀みない。

「後半のルッツも……、エッジは的確です」

 その後、3連続ジャンプやステップがスローで映し出され。

 最後の俯いたポーズから、ふっと顔を上げたヴィヴィの微笑みが、ドアップで映し出された。

 画面が切り替わり、キス アンド クライで、ジュリアンと話し込むヴィヴィが映し出される。

「慎重……過ぎちゃいました……」

 そう言って眉をハの字にしたヴィヴィに、うんうん頷きながら英語で捲くし立てるジュリアン。

 その隣には、ペットボトルのキャップを外し、ティッシュボックスを差出し――と、甲斐甲斐しく妹の面倒を見るクリスの姿が写り込む。

「「慎重過ぎた」って、1本目のアクセルですかね?」

 笑いながら問う鳥海に、荒河も笑い声をあげる。

「でしょうね。きっと本人が一番、誰よりも解っていますね」

 鼻を噛んだヴィヴィが、テレビカメラに向かってにっこり笑って両手を振る。

「ああ、篠宮らしい明るい笑顔がやっと出ました。昨日のショートは、あと0.2ポイントで歴代のSP最高得点を超えるところまで迫りました。フリーはどうか?」

『篠宮さんの得点 149.97点 総合得点228.45点――。現在の順位は第1位です』

 場内アナウンスが得点を読み上げた途端、広大なアリーナには地響きのような感嘆の声が上がった。

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