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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章
「228.45――!? 出ましたっ 篠宮 ヴィクトリア、自己最高得点! 4年前のオリンピックの210.94を大きく上回りました。228.45! 本人は納得いかない部分がありながらも、この得点ですっ」
鳥海アナウンサーの興奮した声音に、荒河も同様だった。
「いえ、これ。もっと出ますよ、これから……。今日は単独のアクセルのGOE(出来栄え点)が低いですが、Program Components(演技構成点)は、ほぼ9点代です。フリーの150点越えは、きっとすぐだと思います」
画面の中、立ち上がって観客に手を振るヴィヴィが映し出される。
スケ連関係者や、他の選手のコーチ等とハグしたヴィヴィは、係員に促されてバックヤードへと消えて行く。
「果たして、篠宮の得点はどこまで伸びていくのでしょうか。NHK杯4回目の出場は、全国民の期待に見事応え、金メダルで飾りました!」
未だ興奮状態の鳥海に、バックヤードのアナウンサーが割り込む。
「では、放送席。演技を終えた篠宮選手です、お疲れ様でした」
男性アナウンサーの労いの言葉に、
「ありがとうございました~」
ヴィヴィは少し間延びした声で答えた。
「会場から、スタンディングオベーションが上がっていましたが、どうだったでしょうか?」
「ん~……。正直、少し悔いが残るんですが、まあそれ以外は凄く気持ちよく滑ることが出来て。凄くお客さんを肌で感じたというか、近くに感じて……なんか、包まれている様な、そんな気持ちで滑れました」
マーガレットの茎越しに浮き出る汗を拭うヴィヴィは、緩い笑顔を浮かべる。
「悔いとは、どの部分に対してですか?」
「……やっぱり、1本目のアクセル……? 自分でも全然気付いてなかったのですが、滑り出したら緊張しているのに気付いてしまって……。助走も、うん、踏切もなんか慎重に入ってしまって。で、尻すぼみな感じで……。他にも細かにミスってますが」
肌襦袢に包まれた細い肩を落としたヴィヴィに、アナウンサーが続ける。
「演技が終わって笑顔も出ていましたが、試合を終えていかがですか?」
「はい、試合を通して見れば、まあ、練習通りに近いものが出せたかな? と思います」