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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

 うんうん頷きながら答えるヴィヴィに、男性アナウンサーは最後の質問をぶつけた。

「グランプリ・シリーズ初戦、見事金メダルで飾りました。今後の試合に対しての抱負をお願いします」

「抱負……。そう、ですね……。まあ、今回も失敗とかではなく、しっかりした形でのジャンプでしたので。それは、うん……、次に繋がるかと。これから、3ヶ月と少し……? 自分に出来る精一杯を積み重ねて、結果、五輪のリンクに立てて居られればいいな、と思います」

 言葉を選びながら真摯に答えたヴィヴィに、アナウンサーは満足そうに微笑んだ。

「お疲れ様でした」

「ありがとうございました」

 ぺこりとお辞儀をしたヴィヴィは、次に待ち受ける国内外のプレスの方へと歩き出して行った。





 11月11日(木)。

 深夜1:30に羽田を発ち、12時間50分のフライト。

 同日の6:20にパリのシャルル・ド・ゴール空港に到着した双子は、オフィシャルホテルで休憩を取ってから、試合会場へと向かった。

 双子にとってグランプリ・シリーズ2戦目となる、エリック・ボンパール杯(フランス大会)。

 パレ・オムニスポール・ド・パリ・ベルシー(ベルシー体育館)の氷の感触を掴みつつ、マイナス8時間の時差とも戦う。

 まあまあの感触で公式練習を終えた双子だが、やはり疲労はある。

 試合前日の現地入り――タイトなスケジュールだが、しょうがない。

 大学の勉強とスケート。

 そのどちらも手を抜かずに励むと決めたのは、自分達自身なのだから。





 11月12日(金)。
 
 夕方から、ペア、男子シングル、アイスダンスのSPが順に行われ。

 そして20:10から、女子シングルのSPが始まった。

 グランプリ・シリーズのSPは、世界ランキングの下位の選手から滑る。

 よって世界ランキング1位のヴィヴィは、毎回 最終滑走からのスタートだった。

 午前中の公式練習も、直前の6分間練習も、想定の範囲内の出来。

 不安が無いと言えば嘘になる。 

 ヴィヴィだって人間。

 アクセルの調子が良いからと言って、ルッツまで決まると言うほど、事は単純ではない。

(でも、今更ばたばたしても、始まらないからね……)

 
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