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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 
  
 上昇ばかりを続けていた音の粒が、ゆっくりゆっくりと下降を辿る。


  それでも、

  根気強く待ってくれている人がいた。

  ずっと陰に日向に支えてくれる人がいた。

  前進も後退も叶わぬ自分に、幾つもの掌が差し出され、

  掴み、引き上げ、先へと導いてくれた。

  頭上を振り仰げば、あまりにもな太陽の光に目が眩む。
 
  眩しさに瞳を細め、掌をかざせば、

  不意に訪れる雷雨。

  頼りない生白い指先を、幾つもの雨粒が滴り落ちていく。


 不安そうに眉を顰めながら、フライングからのキャメルスピン。


  しかし、

  自分はもう立ち止まらない。

  立ち止まってはならない。

  このちっぽけな両の掌に、

  沢山の守りたいもの、
  
  無数の期待・希望を抱えているから。

  だから、

  濡れて凍えた両手を振って、弱い自分を振り払い、

  私は掴む――大事で、大切なものを。

  もう、辛い顔なんてしないから。

  ううん、

  もししても、すぐに面を上げて笑うから。

  だから、一緒に成長しよう。

  Girl(少女)から、Woman(女性)へと――。


 そう前向きになる気持ちを現わす様に、

 足換えのコンビネーションスピンも、徐々にポジションが高くなっていく。
 

  変化することは恐怖。

  幸福は何故かいつも、絶望と隣り合わせだ。

  でも、

  愛している人と一緒なら、

  強くなれる。

  そう、自分は、きっと――


 広く寒いリンクに、深い和音がしっとりと滲み、

 そして、ふんわりと微笑んでフィニッシュしたヴィヴィ。

 その表情は、ほんの少しだけ、滑り始めた頃からは大人びて見えた。

 静かなリンクがあまりの大歓声に一気に包まれ、大きな瞳が驚きで微かに見開かれる。

 少し上がった息を、胸に手を添えて落ち着かせ、

 ヴィヴィは会場を埋め尽くす観衆に向かい、感謝の気持ちを込めて頭を垂れた。




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