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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章
11月20日(土)。
チームメイトがスケート・カナダで必死に戦っている最中。
ヴィヴィはというと、やっぱり匠海と葉山の別荘にいた。
「………………」
(とりあえず、謝っておこう……。ごめんなさい)
2階まで吹き抜けのリビングの、巨大なガラス越し。
カナダがあると思われる方角に向かい、両手を合わせるヴィヴィを、匠海は不思議そうに見つめていた。
「ヴィクトリア、ブドウ洗ってくれる?」
そう声を掛けられ、ヴィヴィは金髪を翻しながら振り返り、満面の笑みで「うんっ」と頷く。
広いキッチンへ行けば冷蔵庫の中には、匠海がお取り寄せしたらしいマスカットが入っていた。
瀬戸ジャイアンツという品種のそれは、1房が大きく ずしりと重い。
「つぶつぶ~♪ ぶつぶつ~♪ つぶつぶマスカット~♪」
調子はずれに歌いながら洗う背後から、匠海がくっついてくる。
細い肩に回される抱擁は柔らかく、背中にぴったりと触れ合わされた胸と腹はやはり逞しい。
(やんっ 甘えん坊さん♡)
「すぐ、洗えるからね~?」
黄緑色のマスカットをじゃぶじゃぶ洗うヴィヴィは、てっきり兄が早くこれを食べたいのだと思っていた。
なのに、
「ひぁ……んっ」
首筋に押し付けられた匠海の唇に、ヴィヴィの細い咽喉からは甘ったるい声が漏れる。
妹の香りを確かめるように、うなじに押し付けられる高い鼻梁。
それだけでも恥ずかしいのに、耳の縁を尖らせた舌の先でつつと辿られれば、抱き締められている華奢な肩が、びくびくと戦慄いた。
「ほら、早く洗って?」
耳たぶを甘噛みしながら催促する匠海を止めたくて、ヴィヴィはブドウを1粒ちぎると、兄の唇に押し付けた。
「おい……し?」
「ん。美味しい」
皮ごと食べられるマスカットの爽やかな香りに誘われ、ヴィヴィも1粒口に含む。
ぷりぷりのそれは皮がぱんと破けると、中から瑞々しい果汁が溢れ、本当に美味しかった。
房の水気を切り、ガラスの皿に乗せたヴィヴィは「洗えた!」と満足そう。
「よく出来ました」
そう褒めながらも、匠海の大きな掌は妹の輪郭を確かめていた。