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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第30章                               

 一人頭の中でぐるぐる考えていたヴィヴィだったが、その灰色の瞳はそんなことを瞬時に吹き飛ばすものを捉えた。

「えっ!?」

 思わず大きな声を発してしまったヴィヴィは、はっと空いたほうの手で口元を抑えた。不用意に周りの注目を集めるようなことをしでかしてしまった自分を、心の中で叱咤しながら恐る恐るあたりを伺うが、時すでに遅し――。

「あら、あの子……フィギュアスケートの子じゃない?」

「え!? ヴィクトリアちゃんがいるよ?」

「わあ……本物も、めちゃくちゃ可愛い!」

「あれ……ヴィヴィちゃんだよね? 一緒にいる超イケメン……、誰かな?」

 英語や日本語で周りの招待客が口々に騒ぎ始めた。

(あ、どうしよう……お兄ちゃんにまで、迷惑――)

 困り果てておろおろと匠海を見上げると、「気にするな」と小さく呟いて微笑んでくれた。

「うん……ありがと」

 そう頷きながらも人見知りを発揮して、長身の匠海の陰になるように若干隠れたヴィヴィだった。ざわざわとざわつく客の中、ステージに上った司会者の男性が英語でスピーチを始める。

「紳士淑女の皆さん。本日は日英交流160周年に相応しいゲストをお迎えいたしております。最近、フィギュアスケートでも用いられているこのバンドの代表曲を、皆さんも耳にしたことがあるのではないでしょうか? 日本の伝統的な和楽器のバンド――AUN J クラシックオーケストラの皆様です」

(う、そ…………)

 そう。ヴィヴィの目の前のステージに置かれていたのは、大きな和太鼓をはじめ、箏(こと)等の和楽器だったのだ。まさか自分のSPの使用曲のバンドに直接お目にかかれるとは思わず、ヴィヴィは掌で口元を抑えたまま驚きで灰色の瞳を見開いた。そのまま匠海を見上げると、意味深に微笑みかけてくる匠海の美しい顔にさらに胸が高鳴る。

「初めまして。AUN J クラシックオーケストラです!」

 現れた総勢8名のメンバーに、ヴィヴィは驚きを隠せなかった。司会の男性が紹介を続ける。

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