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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章
「ふ。Kitty(子猫)は逃げ足が速いな?」
妹の隣に腰を下ろした匠海は、「俺も」とマスカットを強請ってくる。
その様子が可愛くて、ヴィヴィは兄の口の中に放りこんであげる。
たまに、あげると見せかけて、自分で食べて。
可愛らしい悪戯をする妹を、匠海は終始 瞳を細めて眺めていた。
(えへへ、幸せだ~~)
「これ、変わった形だね?」
黄緑色の大きな粒を指先で摘まむヴィヴィは、それをしげしげと見つめる。
かなり寄り目になって間抜けなのだが、本人は気付いていなかった。
「ああ、別名 おしりブドウ、だからな」
「……へ……?」
兄の言葉にきょとんとし、美しい顔と そう言われればそうにしか見えないブドウの粒 を見比べる。
(だ、だから、ヴィヴィのおしり、触ってたの……?)
そんなヴィヴィに何故か伸し掛かってきた匠海は、太ももの上に載せていたガラスの皿を取り上げようとする。
「あ……、まだ、たべるぅ」
花より団子。
まだ半分近く粒の残っている房を、物欲しそうに目で追う妹。
「いいよ、食べてて。ただし、俺にお尻を可愛がられながらね?」
そう囁いた匠海は有言実行とばかりに、華奢な躰をソファーへ俯せに寝転がらせてしまった。
座席部分に突っ伏した目の前に、マスカットの皿が置かれたと思えば。
さっそくワンピの上から、お尻を揉み始めらる始末。
「………………」
(おしりブドウ食べながら、お尻を可愛がられる……。なにこのカオス)
いつものヴィヴィなら「いやいやっ」と暴れるが、今日はぐっと我慢することにした。
シーズンインしてから多忙なヴィヴィは、2週間に1回しか匠海と愛し合っていない。
週末は試合で屋敷にいないことが多いし、平日は勉強とスケートとでクタクタで、それどころじゃない。
だから今日は、兄の身も心も全てを受け止めようと思っていた。
(もしかしたら、次にここに来れるのは、オリンピック後……。ううん。きっと世界選手権か、国別対抗戦が終わってからじゃないと、無理……)
来年の4月半ば――現実的に考えて、兄妹が次にゆっくり出来るのは、その辺りになってからじゃないと無理だ。