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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

「ふうん。じゃあ、ヴィヴィ。やっぱり生まれた時から、お兄ちゃんを恋愛対象に見てたんだね」

 そう能天気に結論付けたヴィヴィを、抱擁を緩めた匠海が覗き込んでくる。

 19歳の今現在まで、ヴィヴィは本当に匠海以外に男性の魅力を感じた事が無かった。

 兄しか見てこなかったし、兄しか目に入らなかったし、兄しか欲しくなかった。

「だな」

 短くそう言って微笑む匠海に、ヴィヴィはくしゃりとはにかむ。

「うふふ。お兄ちゃん、だ~~い好き♡」

 薄い胸も腹も腰も、隙間なくぴったりして。

 そして互いの心も、ひとつになっていると感じられる。

「大好き……」

 再度そう囁いたヴィヴィを、匠海はいつまでも撫でてあやしてくれたのだった。


  


 21時をまわった頃。

 2階の薄暗い寝室には、静寂が降りていた。

 キングサイズのベッドに寝そべった匠海の上、ヴィヴィはくたりとその上半身を突っ伏していた。

 2人分の体液で汚れたそこは、まだ繋がったままで。

 2週間ぶりのセックス。

 互いにゆっくり長く愛し合いたくて、甘い余韻を引きずったまま、しばしの休憩さえも愉しい。

 匠海の厚い胸の上で、ふにゃりと緩みきった表情を浮かべていると、

「ヴィクトリアは、指先まで綺麗だな……」

 そう囁いた兄に、右手を取られた。

「……うふふ」

「なんだ?」

 突然含み笑いを零す妹に、匠海は面白そうにその小さな顔を覗き込む。

「ん……。ヴィヴィのオオカミさんが、ヴィヴィの指、舐めてるの」

 右手の人差し指を舐め上げたり、口に含んでちゅっと音を立てて吸ったり。

 なんか、そんな匠海も可愛らしくて、ついつい頬が緩んでしまう。

「オオカミ……? ああ、そうだったな」

「覚えてる?」 

 少し疑わしそうに尋ねたヴィヴィ。

「もちろん。俺はカバが良かったのに……」

「いやっ お兄ちゃんは、ヴィヴィのオオカミさんだもんっ」

 格好良くて、肉食で、孤高の存在って感じ――うん、ぴったりだ。

「じゃあ、ヴィクトリアを骨までしゃぶって、喰い尽くさないと」

 にやりと悪そうに嗤う匠海に、ヴィヴィは少し不服そうに「違うよ」と突っ込む。

「ん?」

「骨の髄まで――だよ?」

 白い歯を覗かせ、してやったりと笑う。

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