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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

 自分の全部をあげるから、
 
 お兄ちゃんの半分は、ヴィヴィにちょうだい?

 本当は全部を欲しいけれど、

 ヴィヴィは貪欲過ぎるから、

 貴方の総てを支配してしまいたくなって、

 きっと、何も手に付かなくなって、うずうずしてしまうだろうから。
 
 心の内を現すように、大人しかったヴィヴィの媚肉が、うねうねと絡み付き始める。

 奥へ奥へ。

 深く、より深く。

 私の中に全て吐き出させて、

 貴方の中を空っぽにしてしまいたい。

(まるで……、飢えた子供、だ……)

 抱き締めて欲しくて両腕を伸ばせば、それよりも早く兄の逞しい腕に抱き寄せられる。

 ほっと息を吐いたヴィヴィに、匠海は苦しそうに囁いた。



「愛しているよ、ヴィクトリア……。

 お前の……お前の全てが欲しい――」



「……――っ」

 まるで自分の心の内を見透かされたような兄の言葉に、ヴィヴィの薄い胸がぞくりと震える。

 愛する人に求められる歓喜に、指先がじんと痺れ、骨を接ぐ関節という間接がきしりと軋んだ。

 ゆっくり腰を振り始めた兄に、妹は自分も腰をくねらせ、

 その獣じみた行為は、別荘を後にしなけらばならない時刻まで、永遠と続いたのだった。





 11月27日(土)。

 グランプリ・シリーズ ロステレコム杯(ロシア杯)で、女子のロシア勢が表彰台を独占しそうな勢いを見せている最中。

 ヴィヴィは匠海の付添で、日本トラスト・サービス信託銀行の創立20周年記念式典へと出席していた。

 篠宮ホールディングスの所有株式数1位の、その大株主。

 さすがにグランプリ・ファイナルまで後1週間半と迫り、ヴィヴィも同伴は断ろうかと思ったのだが。

 夕方の早い時間から開始された為にやはり出席して、兄の恋人としての最低限の役割は果たした。




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