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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章
12月8日(木)。
15:00からスタートしたグランプリ・ファイナルは、ジュニアの試合が続き、
18:00からの氷上オープニング・セレモニーを挟み、シニアの試合が始まった。
SPの滑走順は、これまでのグランプリ・シリーズ6戦の中での獲得ポイントが低い選手から滑るため、ヴィヴィは最終滑走者だった。
同時刻――遠く離れたフランスでは、フランス公共放送にてフィギュアスケート解説が行われていた。
実況:ネルソン・モノフォール
解説:フィリップ・カンデロロ(プロスケーター)
解説:アニック・デモン(コーチ・振付師)
この3名による、公共放送とは思えない実況解説番組――通称、お茶の間解説、である。
ネルソン「最終滑走者は、日本1番の期待の選手。マドモアゼル、ヴィクトリア・篠宮。言わずもがなの、平昌五輪 金メダリスト」
ほぼ満席に近い観客に向かって、名前をコールされたヴィヴィは、両手を挙げて歓迎の拍手に応える。
その身に纏うのは、空色を基調とした色鮮やかな衣装。
ネルソン「この試合は当然、日本のテレビ局でも放送されており、3500万人、あるいは4000万人の日本国民が見守っています」
広大な氷上、スタートの位置を決めたヴィヴィが、軽やかにポーズを取る。
ネルソン「曲は日本人作曲家、正勝・高木のピアノ曲『girls』」
高い和音の響きと共に、滑り始めるヴィヴィ。
しかし、フランスの解説席は喋りたい放題だ。
フィリップ「ヴィヴィは日本の曲が好きだね。4年前の平昌五輪も日本の曲で、とても素敵だった」
ネルソン「このSP、いつも通り冒頭に3回転アクセルが組み込まれた、難しいSP。女子では現在、ヴィクトリア・篠宮だけが成功しているジャンプです」
フィリップ「うん、3回転アクセルを成功させれば、ヴィヴィは間違いなくトップに立つだろうね」
ネルソン「さあ、アテンション! 注目! 最初のジャンプが来ますよ!!」
そう言って注意を引いたネルソンの視線の先、ヴィヴィはいつも通り3回転アクセルを降りる。
フィリップ「ウィ~~~~っ!! 素晴らしい3回転アクセルだっ!!!」
アニック「フォ~ウ!」
ネルソン「ウィ、ウィ! ヴィクトリア・篠宮の出だし、素晴らしい」