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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

 連打する和音の上昇に合わせ、リンクをめい一杯使ったステップ・シークエンス。

 なんと、フィリップは会場と一緒に、パチパチと手拍子をし始めた。

 レイバックスピンを高速で回るヴィヴィに、フィリップは注意を促す。

フィリップ「アクセル決めてホッとしただろうけど、集中し続けて。SPは最後まで、完璧な演技をしないと――」

 演技は後半に入り、切なく重ねられる音色の中、コンビネーション・ジャンプへと移る。

ネルソン「凄く良い。3回転ルッツ + 3回転トウループ。とても綺麗なコンビネーション・ジャンプ」

 そして緩やかになり始めたピアノに乗せて、最後の3回転フリップを降りる。

フィリップ「ここまでで、他の選手をかなり突き放したよ。頑張れ、ヴィヴィ! さっきネルソンが言ったように、日本の何千万人の人々が、お茶の間から君を応援しているよ」

 フライングキャメルスピン。

 そして、ゆっくりと静かにフェイドアウトしていく音色に乗せた、足替えのコンビネーションスピン。
 
 SP全ての要素を熟したヴィヴィが、ふんわりと満足そうな微笑みを浮かべ、フィニッシュする。

ネルソン「素晴らしい! ヴィクトリア・篠宮のこの演技は、とてつもなく素晴らしかったよ! なんと、中国の会場が、観客が、スタンディングオベーションをしている!」

 今まで割と静かだった、コーチ 兼 振付師の女性――アニックまでヴィヴィを絶賛する。

アニック「ブラボー、ブラボー! ヴィクトリア!」

フィリップ「僕の(スケートの)孫。本当に君は僕の誇りだ! ブラボー!」

ネルソン「フィリップも観客と一緒に立ち上がっています! スケートでの貴方のお孫さんである、ヴィクトリア・篠宮は、世界一のスケーターだね。娘の真緒・浅田も本当に素晴らしい選手だった! 本当に本当に、素晴らしいSPでした」

フィリップ「YES! 真緒・浅田! 僕の娘――! ミドリ・伊藤と言い、ニッポンは本当に、アクセルジャンパー天国だね。フランスに1人くれよ」

 四方に礼を送ったヴィヴィは、投げ込まれた花を拾いながら、リンクサイドへと引き上げて行く。

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