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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

ネルソン「あはは! さあ、ジュリアン・篠宮が、体当たりのように娘を抱擁します。ではこの後、アニックに技術面の事などを少し解説して貰いますが、アニック。凄い数のカメラマンに、凄い数の花束ですね?」

 会場の天井に据えられた大きな液晶ビジョンに、ヴィヴィのスロー映像が映し出され、観客がその一つひとつに「お~」と唸り始める。

アニック「女子のSPで、4つの3回転ジャンプがあったわ。凄いことよ。この3回転アクセルの着氷を見て? フィリップ、貴方もっと彼女を誇りに思っていいわ。だって、見てよ、この3回転アクセル。着氷が良いわ。綺麗に降りてる。現時点で基礎点が34.64。技術点ではトップだわ。プログラムは細部にまでこだわられていて、スピードもあった。もう一度この3回転アクセルを見てみましょう。1回転半、2回転半、3回転半……。ウィ、ウィ! 後ろから見ても、完璧だわ!」

 興奮冷めやらぬ様子のアニックは、機関銃のように喋り続ける。

アニック「エッジを持ち替えての完璧なスピンで、文句なし。そしてこのステップ・シークエンス。とても良い。軽やかな音楽だけど、しっかりと力強く乗っている。この曲の最高潮のところにぴったり。本当に素晴らしいプログラム。今夜 彼女がやったプログラムは、抜きんでて素晴らしいわ」

 そして映像は、キス・アンド・クライの様子に切り替わる。

ネルソン「左隣には、先程滑ったばかりのクリス・篠宮もいます。ヴィクトリア・篠宮、おそらく圧勝でしょうね。さあ、フィリップ、あなたのスケートのお孫さんに対して、一言お願いします」

 SPの点数が画面に映し出される。

 78.48――今シーズンのベストであるNHK杯から、わずか0.2ポイント増やした78.50.

 それでも、シーズンベストを更新したヴィヴィは、納得の表情で頷いていた。

フィリップ「2位の選手を10点も上回ってのSP1位。最高のフィニッシュ、そう最高のフィニッシュ! まだ明日のFPが残っているけれど、今の段階では おめでとうを言うよ、ヴィヴィ! FPの『ジゼル』はヴィヴィのハマりプロ。フランスの視聴者の皆さんも、ぜひご覧あれ」

 コーチ達と連れ立って、バックヤードへと消えていくヴィヴィ。

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