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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章
主役がいなくなると、解説席は更に話に花が咲く。
ネルソン「そう言えば、知ってますか? 日本ではクリスとヴィクトリアが、アイスショーでペアを組んで披露しているんですよ、贅沢ですね~」
フィリップ「知ってるよ! なんと双子で3回転アクセル飛ぶんだ!! この世界であの双子にしか出来ない、ブラボー過ぎる! フランスでも、ううん、彼らの血の3/4を占める英国でもいいから、EU圏でも披露して欲しいよ」
オジサマ2人が盛り上がる中、中継の男性アナウンサーが割って入る。
『解説席のネルソン氏? ネルソン氏?』
ネルソン「ああ、ヴィクトリア・篠宮にインタビュー出来るようです。どうぞ?」
『ヴィクトリア・篠宮選手に来て頂きました。今日のSPの演技に一言。満足なさっていますか?』
マイクを向けてくるフランス人リポーターに、ヴィヴィはこくりと頷く。
『はい。やれるだけの事はやれたと思うので、今は取りあえず、満足と言いますか……うん、ほっとしています』
『本当に素晴らしい演技でしたが、明日のFPと合わせて、このファイナルでチャンピョンになれると思いますか?』
えらく気の早い男性リポーターに、ヴィヴィは一瞬きょとんとし、
『え~と、まだ、FPを滑ってみないと、分からないですけれど(笑) そうなれるように、全力を尽くすつもりでいます』
『今日は解説席に、フィリップ・カンデロロ氏がいるのですが、ご存知ですよね? ご挨拶してくれますか?』
その往年のスター選手の名を聞いた途端、ヴィヴィの小さな顔に ぱあと嬉しそうな表情が広がる。
『Bon soir!(ボンソワ:こんばんは!) フィリップ、フランス杯ぶり? お元気ですか~?』
ネルソン「見て下さい。彼女、とても喜んでますよ」
フィリップ「Bon soir ヴィヴィ! 相変わらず美しいフランス語だね? そしてSP1位、誇らしいよ!」
『Merci beaucoup.(メルシーボーク:どうもありがとう)。今度、日本語の挨拶、教えて差し上げますね~?』
イヤホンを指した方の耳を押さえながら、ヴィヴィは片手を振って笑う。