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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

 そんなヴィヴィに、男性リポーターは悪戯っぽく続けた。

『フィリップ氏は、自称・貴女のグランパ(祖父)ですが、いつも貴女の事が自慢みたいですよ?』

『あはは! フランスのグランパ~! ヴィヴィだよ~っ』

 (日本のメディアに対しては、絶対にしないが)両手を振ってカメラ越しにおどけるヴィヴィに、放送席の3人はというとデロデロの様相を呈していた。

フィリップ「ああ、私の孫! 今日も偉かったね~♡」 

アニック「まあ、なんて愛らしい子なのかしら、ヴィクトリア!」

 そんな解説席の声がイヤホン越しに聞こえてきて、流石のヴィヴィもちょっと苦笑した。

『我々にとって、貴女は歴史に残る偉大なスケーターの1人です。私達フランス人は、貴女の全てが大好きですよ。そのことをお伝え出来て光栄です、そしてブラボー!』

 手離し過ぎる賞賛の声をくれるリポーターに、こそばゆいヴィヴィは少し頬を赤らめて照れる。

『こ、光栄です……。ええと、フランスの皆さん。いつもクリス共々、応援して下さり、本当にありがとうございます。ん~と、明日も頑張りま~す!』

 「にゃは」という効果音が似合いそうな、緩みきった笑みを浮かべたヴィヴィ。

 しかし、次の国のインタビューが迫っていることもあり、両手を振って去って行った。

『ヴィクトリア・篠宮選手でした。中継は以上です』

アニック「本当に、なんて可愛い日本の孫なのかしら。私、もっとファンになっちゃったわ!」

フィリップ「僕も少しは、影響力あるだろう? えっへん」

 50歳とは思えぬ少年ぽさで、そう威張るフィリップに、スタッフからも笑いが起こる。

ネルソン「フィリップ、凄いよ! 君の名前を聞いた途端、こちらを見て瞳を輝かせていたよ」

フィリップ「ヴィヴィは僕を見つけると、飛んで来てハグしてくれるんだ。もう本当に可愛いよ。リンクサイドのカメラマンも、ヴィヴィに惚れちゃったらしいよ?」

ネルソン「取り合いだね?」

フィリップ「負ける気がしないけどね?」

アニック「あはは!」

 そうして日本ではありえないほど緩い、フランス公共放送の実況解説番組(お茶の間解説)は終了したのであった。




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