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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章
12月22日(木)、長野県 ビックハット。
ついに、五輪代表選手の選考を兼ねた、全日本選手権の火蓋が切って落とされた。
日本が持っている出場枠は――
男子・女子シングル :共に3枠
ペア・スケーティング:2枠
アイス・ダンス :2枠
そして、日本スケート連盟が発表した、ミュンヘン五輪代表選考基準は、次の通り。
(1)1人目は、全日本選手権優勝者を選考する
(2)2人目は、全日本2位、3位の選手と、グランプリ・ファイナルの日本人表彰台 最上位者の中から選考を行う
(3)3人目は、(2)の選考から漏れた選手と、全日本選手権終了時点でのワールド・ランキング日本人上位3名、ISUシーズンベストスコアの日本人上位3名選手の中から選考を行う
以前の五輪選考基準には、グランプリ・ファイナルの日本人最上位メダリストは、1番に内定していたらしい。
しかし今の基準は、この全日本選手権で3位以内に入らないと、非常に難しい立場に置かれるという、どの選手にとっても大変な状況だった。
誰も彼もがライバル――という状況で、殺伐な雰囲気が漂いそうだが。
ちょうど試合が始まった頃から、動画投稿サイトYouTubeでは、特別強化選手14名と、
アイス・ダンス:安方 静流・鈴木 賢太郎 組
ペア・スケーティング:下城 舞・成田 達樹 組
上記の強化選手Aの4名――合わせて18名で作成した “クリスマス・メッセージ” が公開されていた。
アイス・ダンスの渋谷兄妹から「クリスマス・メッセージ、作ろうよ~!」との誘いがあり、
「確かに。クリスマス真っ最中、テレビの前や会場で応援してくれるファンの皆に、お礼したいね」と全員が賛同し、それぞれが持ち寄った動画を組み合わせて作成されたのだった。
初日、17:45から始まった、男子シングル SP。
30名も参加する為、滑走順は上位12名とその他のグループに分けて、抽選によって決められた。
第4グループの最終滑走となったクリス。
ヴィヴィは久しぶりに、双子の兄の傍で試合のサポートに入っていた。
常と同じく、淡々と調整を進めるクリス。
付かず離れずで見守っていると、周りの選手達の気負いや重圧、鬼気迫る気迫がひしひしと伝わってくる。