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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第30章                               

 その後楽器紹介を挟んで数曲を演奏し、ステージは終了となった。客達がちりぢりにステージから離れていく中、ヴィヴィはその場に突っ立ったままだった。しばらく感動でぼうとしていたヴィヴィだったが、はっと正気に戻る。いつの間にか自分は匠海の腕に両腕で縋り付いていた。しかもかなり力を込めて袖を握っていたのでその部分が皺になっている。

「ご、ごめんなさい!」

ぱっと両手を放したヴィヴィに、匠海が笑いながら見下ろしてくる。

「ヴィヴィ、涙目になってる。そんなに感動した?」

「うんっ! やっぱり生演奏って違うね! 迫ってくるものが全然違う!」

 興奮してまた匠海の袖に縋り付いてしまったヴィヴィは、また慌てて手を放し、匠海に笑われる。

「ヴィヴィったら、いないと思ったらここにいたの? 匠海も一緒にいらっしゃい。バンドの皆さんに挨拶しに行きましょう」

 周りに人が少なくなりヴィヴィ達に気付いた母ジュリアンが、クリスと父グレコリーと一緒に近づいてきた。

「うん! お兄ちゃん、行こう?」

 ヴィヴィはそう言うと、家族と一緒に楽器を片し始めたバンドの皆さんへと挨拶に行く。

「うちのヴィヴィのSPに皆さんの曲を使う許可を頂いて、本当にありがとうございます」

 とジュリアンがお礼を言い、ヴィヴィもそれに続いた。

「初めまして。篠宮ヴィクトリアです。えっと……すっごく感動しましたっ!!!」

 グローブに包まれた手でドレスのスカートを両手で握りしめながら興奮気味にそう自己紹介したヴィヴィに、8名のバンドの皆からは驚きの声と喜びの声が返ってきた。

「お! やっと本物とのご対面だ!」

「きゃ~っ! ほんとお人形さんみたい、可愛い~っ!」

 口々にそう言いながら自己紹介してくれるバンドのメンバーに、ヴィヴィは直ぐに打ち解けて母ジュリアンと一緒に箏や三味線を触らせて貰ったりした。クリスと匠海は和太鼓や鳴り物に興味津々で、父グレコリーは美しい女性メンバーにデレデレだった。

「実は俺、ステージからヴィクトリアちゃんがいるの、気付いてたんだよね」

 箏奏者の市川がぼそりと零したその発言に、メンバーが総出で突っ込む。

「なんだよ! 気づいてたなら言えよ~……ステージに上がってもらったのに!」

「そうだよ。共演してたらお客さんもすっごく喜んでくれただろうに~!」
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