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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

 ヴィヴィの今季のエキシビション・ナンバーは『花のように』。

 ちょうど舞台に現れた中居 智弥が作曲した、二十五弦箏(こと)とヴァイオリンで演奏される曲。

「中居さん! 遠い所、ご足労ありがとうございます。今日、よろしくお願いします」

 大きな声で舞台上の中居にそう挨拶したヴィヴィに、彼は手を振って笑顔を浮かべた。

「ヴィヴィちゃん、こちらこそ! 後で、音合わせしようね?」





 せっかくの生演奏でのエキシビなので、ヴィヴィは振付を変える事にした。

 元々、ジュリアンとヴィヴィで振付けたものだし。

 最初の30秒――中居の雅な琴の音色だけにスポットを絞り。

 白砂のヴァイオリンが被さるところで、リンク上に佇むヴィヴィにスポットが当たり、滑り始めるという振付に変更する。

「フィギュアの会場って、独特の雰囲気って聞いてるから、なんか緊張する……」

 まだ客の入っていない客席を眺め、そう謙遜する中居に比べ、

「え~~、俺の演奏は無視して、ヴィヴィ、滑り始めるわけ~~?」

と、子供みたいなことで駄々をこね始める白砂。 

「はいはい。じゃあ、今先生の艶姿も、滑ってる最中に止まって、そっち見るようにしますから~」

 そんなこんななやり取りを、互いに着けて貰ったピンマイク越しに言い合っていたので、周りのスタッフやスケーターに笑われてしまったのだった。




 
 17:30から始まったショーは、五輪選手への壮行会でもあり、昨日迄の熱戦を称えるものでもあり。

 観客も演じるスケーターも、晴れ晴れとした清々しい表情を浮かべていた。

 生演奏での演技は滅多に無いものなので、ヴィヴィはちょこちょとこバックステージからリンクを覗き見しては楽しむ。

 主催者が用意してくれたクリスマスケーキを摘まんだり、

 他のスケーターと写真を撮ったりして、存分に束の間の休息を味わい、互いの健闘を讃え合った。

 そして、肝心のヴィヴィのエキシビション――『花のように』。

 自分が惚れ込んだこの曲を、ヴィヴィは観客に存分に味わって欲しかった。

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