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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章                 

 チューリップ、紫陽花、カラー、クチナシ、芍薬、ラナンキュラス、コスモス、白花曼珠沙華、百合、コデマリ、薔薇――。

 ヴィヴィがここまで、エキシビで使った白い花々。

「これをですか? もちろん、後で差し上げますよ」

 女子アナの言葉に「やった」と両手を握り締めたヴィヴィは、隣の本郷に笑いかける。

 7歳も年下のヴィヴィを、本郷は「はいはい、良かったね~」と苦笑いであやす。

「このお花が一番好きとか、ありますか?」

 その問いに、ヴィヴィはフリップを指さす。

「好き……なのは、芍薬(しゃくやく)? 豪華なのに、やっぱり和の佇まい……なのが、うん、好きです。周りに人気だったのは、白花曼珠沙華(まんじゅしゃげ)で……。これ、白い彼岸花で、みんなに珍しがられました」

「ミュンヘンで滑る花は、決まってるんですか?」

 当然聞かれると思っていた櫻井の問いに、ヴィヴィはにかっと大きく笑い、朱に染まった唇を開く。

「はい。もちろん、秘密ですけれど!」

「あはは! では五輪では何が出てくるか、予想しながら楽しませて貰います。さて、オリンピックへの意気込みをお聞かせ下さい」

 その催促に、ヴィヴィはピシッと姿勢を正し、両手でマイクを握り直す。

「はい。ええと、4年前はまだ15歳で。世界選手権にも出た事も無いペーペーだったんですが……。ふふ。知子ちゃんや引退した佳菜子ちゃんにお世話になって、試合を楽しみつつ、自分を保つ事が出来ました」

 「いえいえいえいえいえ」と、顔の前で手を振って謙遜する宮平に、

 ヴィヴィも「いえいえいえいえいえっ」と手を振って、互いにおどけた。
 
 そして、「どっちでもいいよ!」と突っ込む本郷。

 会場もそんなコミカルで仲の良い3名に、温かい笑いが起きる。

「で、2回目のミュンヘンでは、自分が周りにとってそんな存在になれるように……。そして、自分の為だけじゃなく、お世話になった方々や応援して下さる方への感謝の気持ちを込めて、望みたいと思います」

 そう言って言葉を締め括ったヴィヴィに、櫻井が切り込んでくる。

「ずばり、目指すは金ですか?」

「え~~? んっと、団体戦は、銀以上を目指します!」

 個人戦については明言を避けた ちゃっかりなヴィヴィに、また笑いが起こった。

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