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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第111章
「……あの子、は?」
女子2人の勢いに圧倒されていたのか、いつもなら軟派な事を吹聴して割り込んできそうな白砂が、今日は何故か静かだった。
「あ、はい。アイス・ダンスのマリア 渋谷、です」
「ふうん。可愛いね」
真顔でマリアを褒めた白砂に、ヴィヴィは「へ?」と間抜けな声を上げ、
「彼女、猫っぽい……。あのアイラインにそばかす、ぐっと来た」
そう熱っぽく語る白砂の瞳は、狙った獲物はロックオン――とばかりに、少し怖かった。
「一目惚れ、かよ……」
ぼそっと突っ込んだ中居は、隣で肩を竦めて見せる。
「ははは……。まあでも、真面目にマリアと付き合いたいなら、アルフレッドに断っておいた方がいいですよ?」
ヴィヴィは尊敬(?)する白砂に、良かれと思ってそう忠告した。
「アルフレッドって?」
どうやら、白砂も中居もフィギュアは観ないらしい。
「マリアのお兄ちゃん。アイス・ダンスのペアだから、普通の兄妹よりすんごく仲良いですよ?」
そう。
ヴィヴィは、本当に良かれと思って、そう言っただけ――なのに。
目の前の白砂の柔和な顔が、物凄く嫌そうに歪んでいく。
「……まったく、どいつもこいつも……。 “お兄ちゃん” っていう存在は、本当に面倒くさいな」
「……へ……?」
(どいつもこいつも……って? 誰のこと……?)
何故か自分の頭をぺちぺち叩いてくる白砂を、全然痛くないヴィヴィは、不思議そうに見上げていたのだった。