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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章              

「僕が “凄い” んじゃ、ないんだけどね」

 そう苦笑した太一は、親族に呼ばれて行ってしまった。

 匠海が知人を見つけて離れていく中、

「ヴィヴィ! クリス!」

 自分達を呼ぶ聞き覚えのある声に、双子は揃って振り返った。

「あ、マドカ~! わあ、お着物、素敵だね~♡」

 鮮やかな空色に淡い色彩の牡丹が散りばめられた振袖は、髪の色が明るい円にもぴったりで。

「そう? ありがと。2人も超似合ってる。お揃いじゃ~ん」

 円が褒めてくれたのは、以前に匠海にプレゼントされたレジメンタルストライプのもの。

 グレー、スモーキーピンク、紺色の光沢のある縦縞ワンピに、肩にファーを巻いたヴィヴィと、

 こちらも同じ配色――細いレジメンタルストライプのアスコットタイを結んだ、スーツ姿のクリス。

「お招き、ありがとう、マドカ……」

 いつも通りのテンションの低さで挨拶したクリスに、円は苦笑し、

「もう、オッサンばっかでさ~、超ヒマだったんだ。ほら、何か食べに行こうよ?」

 そう悪戯っぽく、双子に耳打ちする。

「あ……、ごめん。ヴィヴィ、ちょっと先に……」

 ハーフアップにした金の頭で、辺りをきょろきょろ伺うヴィヴィに、円が不思議そう「ん?」と聞き返す。

「お知り合いの方が20名程、いらしてて。ご挨拶してくるから、2人で食べてて?」

「え? 知り合いって、スポンサー関係とか?」

 きょとんとした円に、クリスは首を振る。

「いや、ここにはいらっしゃらないけど……? もしかして、兄さん繋がりの……?」

 クリスのその問いに頷こうとした時、

「ヴィヴィちゃん。明けましておめでとう!」

 そうにこやかに声を掛けて来たのは、味の源グループの最高経営責任者だった。

「あ、伊藤さん! 明けましておめでとうございます」

 丸顔の伊藤は、まるで孫でも見るように相好を崩していた。

「今年は、賀詞交歓会、来なかったんだね? みんな寂しがってたよ?」

 昨年、兄に付き添って参加した、経済三団体賀詞交歓会。

 今年は1月3日にあったのだが、匠海は父・グレコリーと一緒に行くからと、ヴィヴィは帯同しなかった。

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