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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章
「え? ど、どうされたんですか、これ?」
驚いたヴィヴィが駆け寄り、ダンボールを受け取ろうとしたが、傍にいた若手の社員が持ってくれた。
「もちろん、うちの主力製品詰め合わせだよ。おうちで食べてもいいし、学校にでも持って行って、皆に食べて貰ってよ」
「え~~っ!? あ、ありがとうございます!!」
感激したヴィヴィは ありがたく頂戴することにし、牧野マネージャーと一緒にgrucoを後にした。
「ヴィヴィ、これ、どうするんだ?」
運転中の牧野が、助手席のヴィヴィに苦笑いで聞いてくる。
「ん~……。さすがにこの量は、大学持っていくの、大変だな~~。あっ! そうだ!」
「ん?」
「牧野さんすみません。リンクに行く前に、少し寄って貰いたい場所があるのですが」
ヴィヴィが向かったのは、渋谷区幡ヶ谷にある児童養護施設 新緑寮。
ここは小学生~高校生までの子供達が30名もいるので、きっと喜ばれるだろう。
時間が無くて、ヴィヴィは園長先生にお菓子を託し、帰ろうとしたのだが。
ヴィヴィを見つけた小学生達が、わらわら集まって来てくれた。
「ヴィヴィ! なんだ~、遊びに来るなら前もって言えよ~」
「そうだよ、まだ応援の寄せ書き、完成してないのにぃ」
「え? 寄せ書き? ヴィヴィに?」
素で驚いたヴィヴィに、「他に誰がいるの?」と口々に突っ込まれる。
「ごめんごめん。今日、お菓子をたっくさん頂いたの。みんなに食べて貰いたくて持って来ただけなんだ」
笑いながら説明するヴィヴィに、中学生や高校生も残念そうに寄って来る。
「え? じゃあもう帰るのかよ?」
「すっごく久しぶりだから、いっぱい話したかった~っ」
そう言ってくれる上の子達に謝ろうとした時、
「こらこら~、みんな。ヴィヴィちゃんは2週間後にはもう、オリンピックなのよ? 戻って氷の上でいっぱい練習しないとね?」
園長先生のたしなめる言葉に、みんなは納得してくれたらしい。
「出発前に寄せ書き送るね?」
「ヴィヴィ、頑張ってね」
「風邪ひいちゃダメだよ~」
そんな暖かな声に見送られ、ヴィヴィは付き合ってくれた牧野と一緒に、新緑寮を後にした。