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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章
子宮が喜びに咽び泣いていた。
女で良かったと心の奥底から思えたのは、この時が初めてだったかもしれない。
それほどに、この日の匠海との交わりは、
濃厚で、耽美で、初めて経験する事の連続だった。
「……ぁ……、くぅ……ふぁ……」
匠海はまだ、吐精の興奮冷めやらぬようで、
妹の名を囁きながら、常と同じように最奥に白濁を塗り広げていた。
ヴィヴィはといえば、失神はまのがれたが、もう放心状態で。
びくびくと引き付けを起こす躰を、兄の前に放り出すだけだった。
やがて少し回復した思考の中、ヴィヴィは兄を責め始める。
なんで、今日だったんだろう。
どうして、五輪前の今だったんだろう。
もうちょっと、待ってくれても良かったんじゃないか?
こんな気持ちの良い事が、まだあっただなんて――。
例えヴィヴィの奥が感じるようになっている、と気付いていたとはいえ、
世界選手権が終わってゆっくりしてから、気付かせてくれたって良かったんじゃないだろうか?
「ヴィクトリア……?」
抱擁を解いた匠海が、腕の中のヴィヴィを不思議そうに見下ろしていた。
「鬼……っ 悪魔っ」
涙を滲ませながらそう詰ってくる妹に、匠海は少々間抜けな表情で「は?」と聞き直してくる。
「~~っ 人でなしぃっ へ、変態……っ」
「え~と……、ヴィクトリアさん?」
情事の甘い余韻を吹き飛ばす酷い罵詈雑言に、匠海は困った様におどけてくる。
「……~~~っ ふぇええんっ」
ガキ丸出しの声で泣いたヴィヴィは、目の前の兄に両腕を伸ばして「抱っこしろ」と言外に強請る。
要望通りに抱き締めてくれた兄に、ヴィヴィは必死に縋り付いた。
こんな深い絶頂があるだなんて、知らなった。
女の一番大事な部分を蹂躙されて、得られる愉悦がこれ程のものだったなんて。
こんなに腰砕けになり、全身で感じてしまうものだったなんて。
知ってしまった今、ヴィヴィはもう兄に骨抜きにされていた。
今までもそうだったけれど、その更に上を行く程、匠海の事しか考えられなくなっていた。
少しでも抱擁が緩まると、不安になる。
兄が離れて行きそうになると、その脚に縋り付き、
身も世も無く泣き崩れて、懇願してしまいそうになる。