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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章              

 明日も

 明後日も

 明々後日も

 匠海に抱いて欲しくて、しょうがなくなる。

「ふぅうっ お、おにいちゃん、なんか、だいっきらい~~っ!」

 ヴィヴィは心の中と180度反対の言葉を兄に投げた。

 だって、そうでもしなければ、1ヶ月半もあるのだ。

 たぶん、

 きっと、

 おそらく、
 
 次にセックス出来るのは、世界選手権の終わった “1ヶ月半も先” なのに――!

「……お前……」

 兄のその呼びかけに、

「……………………なに?」

 ヴィヴィは随分勿体ぶって呟く。

「嘘吐くの、致命的に下手だな?」

「……~~っ!? な……っ なっ!?」

 ヴィヴィの心の内などお見通しの匠海は、言わなくていいのにそう煽る。

 絶句して逃げ出そうとしたヴィヴィを、これでもかと強く抱き締めて逃してくれない兄の腕。

「ふ、大丈夫。世界選手権終わったら、たっぷり愛してあげるから。だから――」

「……だ、だから……?」

 恐る恐る先を促したヴィヴィに、匠海は何故かむすっと表情を変え、形の良い唇を開いた。

「だから、世界中の猛者(スポーツマン)が集う五輪で、浮気なんかするなよ?」

「……――っ!?」

 まさかの兄の言葉に、ヴィヴィは大きな瞳を真ん丸に見開いて絶句する。

(はあ~~っ!? す、する訳ないでしょ――っ!? ヴィヴィとクリスは、それでなくても試験と試合で、ぶっ倒れそうなスケジュールなのにぃ~~っ!!)

 そして匠海はというと、硬直状態のヴィヴィを軽々と抱き上げ、

「さあ、お風呂でも隅々まで愛してあげようね。ああ、色んなところに浮気防止の所有印(キスマーク)も付けてあげようねえ~~?」

 そう恐ろしい事を発しながら、嬉々としてバスルームへと向かったのだった。








 1月30日(月)から始まった、東大冬学期の学期末試験。

 日頃から予習復習を欠かさない双子は、粛々と試験を受け続け、スケートとの両立を熟し。

 そして2月6日(月)。

 日本代表選手団公式服装に身を包んだ双子とチーム双子の面々は、周りに盛大に見送られながら、羽田空港を12:20発の飛行機で飛び立った。

 目指すはもちろん、ドイツ・ミュンヘン国際空港。

 本日の20:00(日本時間:翌日4:00)から始まる開会式に、参加する為だ。

 
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