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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章              

 12時間後の17:20(日本時間 翌日1:20)。

 時差ボケ気味の双子達は、ミュンヘン国際空港に降り立った。

 その身に纏うのは、出発の際も着ていた日本代表選手団公式服装。

 男女とも紺のジャケットで、白パンツ・白スカート。
 
 男子:水色のシャツ、女子:桜色のシャツ。

 上記が移動時等の服装で、公式な場や式典では、

 更に、赤地に白の太いラインが入ったネクタイか、赤地に大きな白水玉のスカーフを選択して身に着けることになっていた。

 空港の大型カートに大量の荷物を積み込んだ双子。

 JOCから支給された公式グッズは大量だった。

 スーツケースにバックパック、キャリーバック。

 かさ張る快適安眠マットレスをはじめ、

 ウォームコート、サロペットパンツ、トレーニングジャケット・パンツ、グローブ、ソックス、ハーフパンツ、キャップ、ジップネックシャツ、オフィシャルスポーツウエア、シューズ……。

 それらだけで、荷物の7割がたは埋められてしまった。

 そのカートを押しながら空港ロビーに現れた双子。

 もちろん各国の取材陣が殺到してきて、牧野マネージャーがすぐに対応してくれる。

 空港警備員にもガードされて一時騒然としたが、双子は時間の許す限りは質問に答えた。

 「体調はどうですか?」との質問に、ヴィヴィは「眠いです。日本は1:30ですから……」と馬鹿正直に答え。

 笑いの起こる取材陣に対し、

「2時間半後には開会式なので、興奮してます……。起きてられます……」

 と、どう見ても眠そうなクリスが続け、

 『どこでもマイペースな篠宮兄妹からは、緊張の「き」の字も見受けられない』と、世界各国が報道したのだった。
 



 空港から、開会式のある会場があるミュンヘンの中心部へは、約28.5km。
 
 通常車で40分で着くのだが、混雑しており1時間半も掛り。

 会場に到着した皆は、慌てて各々のIDカードを認証して貰い、日本選手団に合流した。

 夜のミュンヘンは寒い。

 氷点下だったりする。

 ロングダウンのウォームコートの温かみで何とか凌ぎながら、フィギュア勢と集まった双子は、いよいよ始まった五輪の開会式――選手の入場行進へと入っていった。

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