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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章
白地に雪の結晶が散りばめられたウォームコートに、赤いマフラーをぐるぐる巻きにしたヴィヴィは、両手に日本国旗とドイツ国旗の小旗を振りながら行進する。
目の前には動画大好きなアルフレッド渋谷が、スマホ片手に皆を撮りまくっている。
そして、高い位置にあるVIP席では、日本選手団を迎えて皇太子夫妻が立ち上がって手を振っていた。
「すご~いっ すごいねっ!!」
宮平と羽生とクリスと揃って腕を組み、ヴィヴィはこれ以上ないほどはしゃいだ。
目の前でも、渋谷兄妹と棚橋・藤堂組が、両手を繋いできゃっきゃしている。
4年前の平昌では、双子は開会式に出られなかった。
国を代表してこの場に立てていることが、ヴィヴィは本当に誇らしくて。
薄い胸の中一杯に興奮と緊張が高まり、武者震いした。
そして選手席から観た、国の威信を掛けた開会式は圧巻の一言に尽きた。
とにかく大掛かりで。
花火は上がるし、見た事も無い舞台装置は、手品や超能力のように仕掛けが解らない。
その中でもヴィヴィがうっとりしたのは、ロマンティック・オペラ。
18世紀ドイツのジングシュピール(歌芝居や大衆演劇)の伝統をもとに、発展したもの。
目も耳も心も酔いしれて、興奮の中で開会式は終了した。
「しかし、寒かった……(-_-)」
そして同時刻――遠く離れた日本では3:00からだったにも関わらず、
篠宮邸の使用人達は階下の使用人スペースで、テレビの前に噛り付いていた。
双子やジュリアンが画面に映る度に嬉しそうな声が上がり、主が無事に五輪の地に辿り着いた事を、グラスを傾けながら祝福する。
ただ3時間後には皆が出来上がった状態で、早番の者以外は各々の部屋へと下がって行った。
朝比奈もワインで良い気分だったが、画面を通して目にした双子の姿に興奮しており、なかなか眠りに付けなさそうだった。
グラスを傾けながら、NHKから民放へとチャンネルを変える。
「……おや……」
偶然目にした画面に映っていたのは、主の1人――篠宮家の末娘・ヴィクトリア。
昨今では、こんな事は良くある事で。
特に五輪間近となると、テレビを点ける度に双子の姿を目にするようになっていた。