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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章
ただ、画面の中のヴィヴィは、いつもと様子が違っていた。
19歳になってもすっぴんばかりのヴィヴィが、美しくそしてどこか妖艶にも見える化粧を施され。
暗い空間に置かれたワインレッドの革張りソファーに、美しく腰掛けていた。
『五輪女王・世界女王――フィギュアスケートの篠宮 ヴィクトリアが、未来を語る』
渋い男性の声に続き、ヴィヴィはにっこりと微笑み、赤い唇を開く。
「Nippon Pride ―日本代表の掟―」
『 “明日の空へ” 日本の翼――日本国際航空の提供でお送りします』
なるほど。
双子のスポンサーでもある企業の、スポットCMだった。
「正直、4年前の自分は本当に未熟で……。五輪に出ようと思ったのも、欲しいものが手に入るからかもしれなくて……。よくある、「テストで100点とったら、欲しいものあげる」的な、あまり褒められた動機ではなかった」
そこで言葉を区切ったヴィヴィは、ワンピの肩を竦め苦笑する。
「逆に、それがプレッシャーとは無らずに、伸び伸び滑れたってのも大きかったですが――」
『そんな篠宮が描く、未来とは――?』
男の声に導かれるように、ヴィヴィの小さな顔がアップになる。
「好きこそ物の上手なれ!」
自信満々に言い切るその表情は、誇らしげだ。
「4年前がそうだったので、今回は応援してくれるみんなへの感謝の気持ちと、五輪で初めてフィギュアを観る人にも、何か伝わる滑りが出来たらいいなと思っています。私はスケートが好きで、スケートに打ち込んでいるけれど。それは十人十色で、色んな壁にぶち当たっている人は沢山いる……。そういう方にとって、私のスケートを見ることが、何かの一助になればと思います」
『それが、篠宮の想う――Nippon Pride』
そこでCMは途切れ、賑やかな早朝のニュース番組に切り替わった。
テレビの電源を落とした朝比奈は、無言のままソファーの背に凭れ掛かった。
「………………はぁ~」
だいぶ経ってから吐き出された吐息は、意外そうなものだった。