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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章              

 テレビの中のヴィヴィは、もう一端の女性に見えた。

 いつもすっぴんなのに。

 いつも寝癖でくしゃくしゃの頭のまま、起きてくるのに。

 幼児の頃と変わらない、くしゃりと顔全体を使って笑うのに。

 薄い唇から零れるのは、楽しげではしゃいだ声で、

 その会話の内容だって、着いて行けないくらいポンポン変わるのに。

 なのに――、

 画面の中のヴィヴィは違った。
 
 プロの手によって美しく化粧され、

 神々しく輝く金の髪は理想的な曲線を描き、浮き出た鎖骨を引き立たせていた。

 苦笑する姿も、慈愛の籠った微笑みも、大人びていて、

 赤く潤んだ唇から発せられるのも、しっかりとした芯のある言葉。

「…………、大人に、なられているのだな……」

 19歳、大学2年生。

 まだまだ子供だと思っていたヴィヴィは、いつの間にやら女性の貌を持ち合わせていた。

 いや。

 もしかしたら、前からそうだったのかもしれない。

 ただ、自分が見ないふりをしたかっただけで。

 自分の主はまだ子供で、庇護を必要とする頼りない――けれど、慈しむべき愛おしい存在。

 そう思い込もうと、見ないふりをしていた。

「………………」

 きっとこのCMを観たら、グレコリーも匠海も、今の自分と同じ感情を覚えるのではないだろうか。

 クリスは――彼は、ちゃんと解っている気がする。

 常に傍に寄り添って、妹の成長を見守り支え続けている双子の兄――ならば。




 そして、

 主をこよなく慕う執事は、もう一度テレビを点け、

 このCMのクリス・バージョンの番組予定を検索し、

「……よし、っと」

 抜かりなく、録画予約をしたのだった。








 開会式の翌日――2月7日(火)。

 ヴィヴィはドイツ・ローゼンハイムで目を覚ました。

 ここは昨年の8月の1週間、シニア 特別強化選手の合宿が行われた地。

 あの時は、特別強化選手14名と、強化選手4名、そのコーチ陣もいて大所帯だった。

 それが今は、団体戦にエントリーしている、羽生と宮平と渋谷兄妹と、棚橋・藤堂組しかいない。

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